第2章 糸口
sideつばき
あんずはあたしにいくつも質問をして考えたり首を傾げたりしながら真剣に話を聞いてくれて、答えにくいことも誤魔化さずに答えてくれた。
「そうだな…あとは本当にただの水分不足とかも考えられるけど、毎日2リットルとか飲んでるんだよね?」
「うん。お茶とお水合わせてだけど」
「食事とは別にって事だよね?」
「うん」
ならこれも違うなぁって言いながら、何か言葉を探すように、今までよりももっともっと言いにくそうに、何度もまばたきを繰り返しながら、控えめに言葉を出した
「あたし、人間は専門じゃないから、はっきりしたことは言えないんだけどね……話を聞く限り、体よりも、心が傷ついてるのかなって思うの」
「傷ついてるのは…あたしじゃなくて涼太だよ……」
どれだけゆっくり優しく触れてもらっても、どれだけキスをしてもらっても、好きだよって言われても……
あたしは全く濡れない
大事にしてもらってるのに…
焦らないで、ゆっくりでいいよってもう何度言わせたか分からない
ゆっくりどころか、あたしは一歩も進めずに、涼太を毎回毎回我慢させて、あたしが口でするって言うとそれをかたくなに拒む。
1人で出すだけなら一人でやるって言って絶対にあたしにさせてくれない。
一緒にって思ってくれるのは嬉しいけど、何度も何度も失敗ばっかりだとさすがにあたしも甘えているのが辛くなる。
「思い出させて悪いけど、大学の時の事……ちゃんと消化できてないんじゃない?」
「そんな事ない。あんなの…もう全然気にしてない!」
「じゃあ、どうしてベッドでだけそうなるの?一緒にお風呂に入れるのにベッドでだけ体を見られるのが絶対嫌で、ソファで仲良くしてるときは声を意識しないのにベッドでだけは絶対に声を聞かれたくないって、あの時撮られたのが全部ベッドだったからじゃないの?ベッドでしたらまた撮られてるかもしれない、誰かに見られるかもしれないって不安がどこかにあるから……」
「違う‼違うっ‼‼‼‼涼太はっ……涼太は絶対そんなことしない……」
「頭では理解してても、心はそうじゃないことだってあるんだよ。黄瀬君はそんなことしないし、演技もしなくていいって頭では分かってても…心がそれを理解できない時もあるんだよ」