第1章 北風
sideつばき
周りの友達とかも演技してるって言ってたから、それが愛情だとも思ってた。
体を求められることと愛情はイコールだと思ってたから、行為自体が好きじゃなくても応えてた。
だけど撮影のことを知って、あの人の独りよがりなSEXはすべて見栄の為で、あたしにイって欲しいと思ってたのも自慢したかったからで、行為中によく“もっと声出して”って言ってたのは音声まできっちり入れた画が欲しかったからって事を嫌って程分からされた。
その人があたしを好きでしてたことなんて何一つなかった。
撮られてたことを知った直後は、みんなが自分のあの姿を知ってるような気がして気が気じゃなかったけど、撮られていたうちの一人の女の子のお父さんが警察官だったこともあって、画像は適切な処理をしてもらえてこの世には一切残ってないし4人の男は退学処分になってそれ以来どうなったかも知らない。
それのおかげなのか傷口が無駄に広げられることもなく、あたしは大学の過程を無事に終えることができたけど、彼氏やSEXに時間を使いたいと思うことは全くなかった。
そして社会人になってもそれは変わらなかった。
押し切られるように付き合い始めた彼のことも嫌いではなかったけど、すごく大切とか肌を合わせたいとかそういう感情は一切湧かなかった。
もう自分を安売りしてみじめな思いをするのは御免だった。
だからやりたくないことはすべて断って、そのうちに彼には他に好きな人ができたらしくあっさり関係は終わった。
別にトラウマを感じてる訳じゃない
でも好きな人もできないし、彼氏が欲しいとも思わなかった。
だけど、あんずが青峰さんと付き合い始めて本当に大切にされてるところを見ると、いいなって思うことは増えていった。
こんな風に大切にしてもらえて、これだけ相手を好きになれる二人のような関係になれるなら、だれかとお付き合いしたいって思うようになった矢先に涼太と知り合った。
付き合えることになって、本当に大好きで、涼太とならしたいって思ったのは嘘じゃない
いつもあたしに好きだって伝えてくれる涼太となら肌を合わせたいと心の底から感じられた
だけどSEXが好きかと聞かれたら……
涼太とならしたい
だけど行為が好きかどうかは別問題だった。