第1章 北風
side黄瀬
俺の質問に黙りこくってしまったつばき
答えないことこそが答えになるときもある
「エッチが嫌いなら、嫌いって言っていいんスよ?」
「……嫌い……だけど……涼太とするのが嫌って事じゃない…」
これは嬉しい
女の子のSEXの好き嫌いはほぼ100%が相手の影響
元々人に触られるのが大っ嫌いって女の子も当然いるけど、つばきはそのタイプじゃない。
きゅーちゃんとは普通にハグしたり手つないだりしてるし、俺ともキスとかイチャイチャとかは普通にしてくれて、目をとろんとさせてくっついてくれるから触られるのが嫌いってわけではなさそう
だからきっとつばきがSEXを嫌いなのは元カレのSEXが嫌いって事で間違ってない。
好きな男に愛情たっぷりに大切に抱かれたらきっと女の子だってSEXを嫌いだとは思わない
見られたり触られたりするのは恥ずかしいけど、好きな人と触れ合うのは幸せだから好きっていう女の子はきっと大事にされてていいSEXをしてるから行為自体を好きになれる
だから逆も同じ
愛情を感じられなくて大切にされてるって思えない、恥ずかしいし、苦痛なだけで幸せだって感じられないからSEXが嫌いになる。
仕事でSEXしてるんじゃないんだから、うまい下手よりも相手を大事に思ってるかどうかって事が行為にはモロに表れる
元カレとのSEXを根掘り葉掘り聞くなんてことはしないけど、SEXが嫌いって状況を変えたいとは思う。
すぐにどうこうなることでもないし、時間がかかるかもしれないけど、別れるつもりなんて最初からないんだから別にゆっくりで全然いい。
俺と体を重ねることを義務感でさせたくない
恥ずかしいけど、それ以上に幸せで愛されてるって実感するから抱かれたいって思えるようになって欲しい。
「ありがと。ちょー嬉しい。ゆっくりいこ?魔法みたいにすぐにどうにかってことは難しいんスけど、その嫌いって気持ちを少しずつ一緒に変えれていければ俺はそれが一番嬉しい」
「…ありがとう……」
この時俺は、問題の本質が何も見えてなかった
嫌いになってしまった原因の問題の根深さを
いくら俺がつばきを大切に思っていても、二人だけで解決したくても
どうにもならないことがあるんだと、思い知らされる。