第1章 北風
sideつばき
したくなければ最初からお風呂にも一緒に入らないし、胸を触られた時点で拒否してる。
あたしは本当に涼太としたかった
なのに、知らないうちに涙はこぼれて…
自分から出てるとは思えない声を聞かれることや、乱れる姿を見られるのがどうしようもなく恥ずかしくて、耐えられなくて、逃げだしたい程の強烈な羞恥心に襲われたのは確かだった
「一緒にお風呂も本当は嫌だったんじゃないんスか?」
「…そんなことない。だって呼ぶか呼ばないかっていうのはあたしが決められたことだもん」
「でも、体見られたりするの嫌だったでしょ?」
「暗かったから…恥ずかしかったけど……また、一緒に入りたい」
一緒にお風呂っていうのは確かに恥ずかしかったけど、嫌ってことは全然なかった。
一緒に湯船に入ってぎゅっとしてもらって、恥ずかしいけど何とも言えない幸せな感じがして、もう少し一緒に入ってたいとすら思った。
「でも、ここはもっと暗いよ?」
「………」
言われてみればそうだ。
寝室は間接照明も消えていて、カーテンも閉め切って月明かりすら入ってこない
暗がりで目が慣れるとはいえ、ろうそくの明かりがある方がまだ視界は確保できてる。
涼太に言われて自分がものすごく矛盾していることに気付いて、何を答えていいのか分からなくなってしまった
「ねぇつばき……もしかしてさ、エッチ自体が嫌いって事ない?」
嫌い
嫌いか好きかで言われたら嫌い
撮られていたことを知る前から
SEXを本当に気持ちいいと思うことはなかった
あたしはイかなかった
大人になっていろんなことを知った今なら、あの時自分がそうなれなかったのは、経験不足や緊張、あの人のどうしてもイかせたがる強引なSEXが嫌いだったんだって分かるけど、あの時はイかない自分がおかしいんだと思ってイッた振りをしてた。
そうすれば早く終わるし、あの人も満足そうだったから、それでもいいと思ってた。
体の相性はいいと思えなかったけど、他の面は好きだったから、そんなことで初めてを捧げた人と別れたくなかった。
それに一緒に経験を積んでいけ、ばいつか彼のSEXを気持ちいいと思えて本当にイける時が来るって信じてた。
だから気持ちよくなくても声を出したし、イッた振りもしてた。