第8章 はち
「鶴さんだけじゃない、これもみんな同じね。
この間重傷で帰って来た三振りを見た時、自分の幼なさを痛感したの。
至らなさも、…。目が覚めがないの、怖かった。あんな気持ち二度としりたくない。
…でも、それをこの歳までしらなかったのは、やっぱりみんなの努力と清光の采配とそれがあったからなんだって、審神者としてちゃんしなきゃだめだって。
だから、恋とかそう言うのにうつつ抜かしてる暇もないの。
鶴さんが意を決して今日私の部屋まで来てくれた理由、なんとなくわかる」
「主」
俺は、何がしたいんだ。
俺は、なんでこんな気持ちしてるんだ?
「もう大丈夫って言ったでしょ。
お世話係を交代制にするって決めたのもね、ちゃんと自分で向き合いたかったからだよ、鶴さんを想う気持ちと。
白状すると、初恋っていうのは変えられないから、そこはごめんね」
やけに大人びて見える。
俺が知らない人間に見える。
「初恋って言っても、一瞬だったけどね。
惚れやすくて困っちゃうね」
「…そうか」
絞り出せたのはその一言だけ。
「あぁ。…恥ずかしいついでに、言うね。ほら、鶴さん言ってたでしょ、想ってる子の話?
大人になった、私からのアドバイスなんだけどさ」
ツンと、鼻の奥が痛い。
「ワンピースを選ぶ時、マネキン買いはよくないよ。あと、白がいいって言った私の気持ちも汲んでほしかったかな」
「…」
「白は鶴さんの色でしょ、ふわふわしてて鶴さんの戦闘服みたいで、お揃いにしたかったの。
まぁ、いまは買ってくれたワンピースでも満足してるけどね。
買ってもらってなんだけど。…それで、鶴さんのお話は解決したかな?」
「…あぁ」
「そっか。よかった。じゃあ清光を修行に出せるね、これで」
あぁよかったと、安堵する君。
動けないのはいつも俺だけ。
置きざりにしようとしたのは俺なのに、いつも君が先にいる。
「鶴さん、大丈夫?」
君の言葉が重い。
「………驚いた。君の成長に」
あぁ、薄々分かってはいた。
俺が君を好いていること。
二の舞を踏んでいること。
魂の形が変わっても、君を見つけてしまう俺が、…俺の方が君を手放せないこと。
「いい女でしょ、私。そのうちいい人連れてくるから、宣言通り、鶴さんに私の孫の世話係やってもらうの」