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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第8章 はち


 「主、ちょっといいか」

 前に訪れたのはどれくらい前だったか。
 主の部屋の前の庭は雨降る今日も、綺麗だ。

 「…どうぞ」

 あぁ、ほんと久しぶりに君の顔を見た。

 「話がある、2人きりで」

 お世話係の今日の当番は、村雲か。

 「村雲、悪いが外にいてくれ」
 「雲さんがいたらダメなの?」
 「あぁ。都合が悪いのは君もだと思うが」
 「…そう。分かった。雲さん、席を外してくれる?また、呼んだら来て」
 「うん」

 俺を一瞥して、脇を通り過ぎる。

 「鶴さん、なんだか久しぶりだね」

 村雲が戸を閉めたのを見て、主から話し出した。
 なんでもない風を装って。

 「そうだな」
 「お世話係のこと、1人で決めちゃってごめんね。返事も聞いてなかったなって、今になって思うの」
 「いいんだ、そんなこと」
 「そんなことか、…そうだね。…………えーっと、話だっけ?」
 「あぁ。加州に聞いた、俺の修行の話が出てること」
 「早速話してくれたんだ、それで?私の部屋に来たってことは、決めたの?」
 「いや、俺じゃなくて。加州に進めた」
 「へ?」
 「君の右腕であると言っても過言じゃないだろ、アイツは。提案したら、条件が君と俺が話すことだった」
 「待って待って、話が見えない。私が鶴さんと話すことと、清光の修行と何が関係あるの?」
 「君と俺の仲を案じているからな」

 君のまん丸の目がこれから悲痛に歪むんだろう。
 俺の言葉で。

 「私と、鶴さんの仲?」
 「あぁ」
 「そう」
 「驚かないのか」
 「うん、驚かない。なんとなく分かってたから」
 「…そうか」
 「ねぇ、鶴さん。今日は雨降っちゃったけどさ、それは全国的にそうみたいだからノーカンね。で、最近晴れが続いたと思わない?」
 「あぁ、そういえばそうだな」
 「でしょ。私のあり方次第で、この本丸に影響があること、知らなかったの。審神者なのにね。学校も行ってたけど、一般の学校じゃ習わないでしょ?」
 「あぁ」
 「私、一生懸命考えたよ。どうしたら、鶴さんが離れないでいてくれるんだろうって。
 勘違いしないでほしいのは、好きとか恋人になりたいとかそう言うんじゃないよ、家族としてみんなと同じようにってことね」

 予防線を先に貼ったのは俺だ。

 「鶴さんが無茶をしないでいられる本丸を作りたいの」
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