第8章 はち
「ふぁあっ、よく寝た」
ギシギシと固まった身体は、寝過ぎたせいか。
人影が見えてスッと障子が空いて、俺の顔を二度見する。
目を見開いたのはあの日共に出陣した伽羅坊だ。
「よぉ、」
「お前、起きたのか?」
「まぁな、ピンピンしてる。ここは、俺の部屋じゃないよな」
「手入れ部屋だ」
「そうか。生還したのか」
「まぁな」
「安定は?」
「とおの昔に帰還して、今は清光と手合わせをしている。清光も、昨日から絶対安静を解かれたからな」
「へぇ、じゃあ俺も手合わせ願おうか」
勢いよく立ったせいで、立ちくらみがする。
「おっと、」
支えてくれた伽羅坊は、やはり頼りになる。
「それだけ寝てれば、体力も落ちるだろう」
「それもそうか。…にしても、不思議だよな。寝て起きたらこんなにスッキリするものなのか、憑きもの全部取れたようなきがするぜ」
「そうか、いいんじゃないか?」
「大倶利伽羅〜、主が」
伽羅坊を呼びに来たのは、加州で俺は少し驚いた。
「安定との手合わせはどうだった?」
俺が問いかけると、迷わず抱きしめて来た加州からはシャンプーの匂いがする。
「ありえねぇっつーの!第一声それじゃないでしょ、俺本当に心配したんだからな!!!!」
自分で抱きしめといて、突き放した加州は目を真っ赤にさせている。
「すまない」
「安定との手合わせは負けたよ!悔しいけど。
…でも、そんなこと良いんだ。ひとまず鶴丸が起きてくれてよかった。大倶利伽羅、お前も大きな声で人呼ぶとかあるだろ?なに黙って鶴丸支えてんだよ!」
「…」
「主だって心配してたんだからな!!呼んでくるから、そこ座ってろ!大倶利伽羅は急いで厨に何か食べるもの、胃に優しそうなの頼んできて」
「あぁ、分かった」
残された俺は唖然としながら、とりあえず言われた通りに腰を下ろす。
数分で加州と共に戻って来た主は、前に見た時よりも大人びて見えた。
「…よかった、目が覚めたんだね」
「あぁ」
「無茶させてごめんなさい」
「え?」
「違うって主、俺が編成組んだんだからって前も言ったじゃん」
「ううん。…第一義的責任は私にある」
いつもと違う様子に、違和感はあった。
「いや、これは俺の弱さのせいで、2人は悪くないさ。すまない、心配をかけた」