第8章 はち
でも、感じた違和感が嘘なんじゃないかと思うくらい、主は自然で。
絶対安静を解かれたのは、目が覚めて2週間後。
目を覚さないで心配かけたんだから当然だと怒られたのは記憶に新しい。
「鶴さん、こっち頼むよ」
「鶴さん?」
俺が目を覚さない間に、やはり世話係は交代制になっていて。
予想通り、新しく加わった"お世話係"と言う項目に意を唱える刀なんて一振りもいなかった。
「鶴さん、何見てんだよ」
今日の世話係は三日月らしい。
…って、縁側に座り主に茶を淹れてもらっているところをみると、世話され係だろ、どう見てもなんて思う。
「愛染、すまない。なんだ?」
「だから、こっち頼むって。…って、主さん見てたのか」
「いや。これをすれば良いんだな?」
「あぁ、うん」
今日は愛染と畑当番。
「にしても、主さん綺麗になったよなぁ。さすが俺の主さんって感じで」
「愛染がそんなこと言うなんて、驚きだな」
「なんだよ、良いだろ別に。本当のことなんだから。昔は鬼ごっこで鬼になって泣いてたのに。
オレ、良く手繋いで一緒に鬼やったんだよ!人間の成長は早いって本当なんだな」
ついこないだまで、俺の手に収まって泣いていたくせにと、浮かんだのは独占欲かもしれない。
「愛染、早く終わらせようぜ」
「なんだよ、鶴さんやけにやる気じゃん」
俺が彼女を囲いすぎていただけかもしれないと、頭の片隅に追いやって仕事を終わらせる。
ここ最近、主と話をしていない。
次世話係が俺の番になるのはいつだろうかと、指折り数えても遠くて、…そもそも手が足りないななどとどうでも良いことを考え始めるほどだ。
「鶴丸」
世話係を解かれた俺と違って、加州は近侍を務めていて、これが初期刀との違いかと思った。
「あぁ、加州。やけに久しぶりな気がするな」
「そうだね」
「安定も手合わせに引っ張りだこのようだしな」
「うん。まぁ、この本丸初の極みだからね。この間、やっと俺も一本取れたよ。疲労を狙ってね」
「はは、策士だな」
「でしょ。かけてたのが三色団子だからね、本気出したよ」
「そうか」
「まぁ、冗談だけどね。次は疲労が無くても勝つよ。…って、そんな話しに来たんじゃないんだよね。
鶴さん、鶴さんにも極みの話きたよ。政府から」
………極み、か。