第8章 はち
「鶴さんに今でも想われる人って、どうしたらなれるんだろう?顕現させた私より、大事な人って。
前にね、清光と安定の話聞いちゃったんだ。その人、私に似てるんでしょ?」
「…あ、え?」
「でも、私じゃない。………清光あのさ、もしも私が私じゃない誰かになれる術があるとして」
「あるじ、」
「まぁ、これは極論なんだけど。もしそれによって、鶴さんが望む姿になれるとしたら、私は多分なりたいって思うんだよ」
「…っ、」
「清光は今言ったね。想いあってるなら応援しようって思ったって。私もそう思うよ。
…なんて、鶴さんがこうやって目を覚さないから、弱気になってるのかもしれないけど。
でも、その時は清光。私がどんな判断してもさ、審神者失格だとしてもさ、ただ一振りのために、誰でもない鶴さんのために、そうすることをのんでほしいの。…ごめんね」
「ずるいよ、主」
「うん、ずるいんだ私。清光がそばにいてくれるのに、鶴さんのことだけしか考えてない。それで、こうやって言うの。
自分の胸に留めておけばいいのに」
「………それは、嫌だよ。言ってくれて嬉しいよ、主。…俺、主のこと目に入れても痛くないって思うくらい大切で大好きなんだから。
鶴丸、早く目を覚ませばいいのにね」
清光は優しい。
誰よりも、何よりも優しい。
ートントン
「大将、加州」
「薬研どうしたの?」
「話し込んでる時にすまない。そろそろ帰還するみたいなんだ」
時計を見ると、確かにもうそんな時間で。
「清光先行ってていいよ。私はもう少しここにいたいから」
「でも、………わかった」
安定の修行がもう終わる。
「鶴さん、安定帰ってくるって。こんなふうになってたら、安定驚いちゃうよ。
…まぁでも、驚かせるのは鶴さんの十八番だもんね」
鶴さんの手を取り、そっと霊力を込める。
「忠誠心なんて、そんなのいらない。
想ってくれなくたって、そんなの怒ったりしない。
…無茶して欲しくない。
鶴さんがいてくれるだけで良い、そばに居なくてもいいの。
存在してるって分かってるだけで幸せだから…って、少しクサすぎ?
…帰ってきて、鶴さん。
お願い。
このまま目を覚さないって、そんなの嫌だよ。安定に一緒におかえりって言おうよ。ねぇ、鶴さん…っ、」
光の束が鶴さんを包む。