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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第8章 はち


 「うん、札は使って、傷は治ったはずなんだけど」
 「ごめん」
 「あの時はあんな言い方しちゃったけど、清光だけのせいって思ってないよ。
 無茶な戦い方したんだろうなってことも、分かってる」
 「それは」
 「っていうか、絶対安静って言った。安定が帰ってきたら、呼び行くから」
 「でももうピンピンしてるんだよ、鶴丸の様子も気になるし」

 そう言ってついてくる清光。

 「もう」

 布団で眠る鶴さんは、もうすっかり傷跡なんてなくて、まるで陶器でできた人形かと思うくらい静かだ。

 「傷跡、綺麗に治ったね」

 後ろに控える清光が私の顔を覗く。

 「うん、清光のも」
 「まぁね、俺の主は腕がいいから」
 「…でも、目を覚さない」
 「そうだね」

 体温が冷たくて、泣きそうになる。

 「雪の精みたい」
 「大層なものだね、それは」
 「ほんとに」

 一房髪を掬い上げる。

 「このまま目を覚さなかったらどうしよう」
 「何言ってんの、人じゃあるまいし」

 弱気な私を励ますように、相槌をうつ清光。

 「清光」
 「ん?」
 「鶴さん、なんか言ってた?」
 「なんかって?」
 「こうなる前、言ってなかった?」
 「どっちかっていうと、俺が言ったかも」
 「清光が?」
 「主と2人で話した日あったでしょ?主が、禁忌を心配しなくていいって言った日。
 あの後眠れなくてさ、布団で考えてた」
 「何考えてたの」
 「主の1番の幸せ…でも、わかんなかった」
 「そんなの、清光やみんなが笑ってくれればそれが幸せだよ」
 「そういうことじゃなくてさ、まぁ、これは俺のエゴもあってね。
 …それでね、思ったんだよね。よくいうでしょ、やらないで後悔するより、やって後悔した方がいいって。
 過去は変えられないけど、未来は変えられるって。その通りだよね、俺たちだって未来のために過去を守ってるみたいな所あるし。
 俺が勝手に悩んだって、意味ないんだよな。だって、2人のことだし。…で、お互い想いあってるなら、応援してやろうって。まぁ、うまくいかないね。
 俺、初期刀なのに鶴丸のこと守れなかった。主の大切な奴なのにさ、かえって庇われてさ。情けないよ」
 「お互い想いあってるってさ、言ったじゃん私、禁忌は心配しなくていいって。鶴さんが言ったんだよ、忠誠心はあるけど忘れられない人間がいるって」
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