第8章 はち
「折れなくても、治せないくらいの重傷になるかもしれない。ちゃんとそういことを考えて編成して欲しい」
清光の顔が、悲痛に歪む。
「はい」
「……みんな大事な家族。大事な刀。一振り残らず、加州清光もその一振り。分かって」
「うん」
「よし。じゃあ、審神者じゃなくて、ただの私の言葉と思って今度は聞いて」
清光の真っ赤な瞳が揺れる。
「…」
「治せてよかった、目が覚めてよかった」
「あるじ、」
「参騎でって、朝の、私の一言が原因?」
「それは、違う。主の言うとおり、俺の過信」
「鶴さん、普段と違かった。清光の言うことなら、鶴さんのむこと多いもん。話聞いてくれようとしたんでしょ、伽羅は付き添い?」
「……全部お見通しかよ」
「伊達にみんなといないよ。…ありがと、いつも任せてごめんね」
「俺は好きでやってるの。主が謝ることなんてない」
「編成も、不測の事態っていうのがあるのは分かってるつもり。
…でも、今度からは少数は控えていこう。政府からの申し出がないかぎり。お願い、私も任せっぱなしはやめるから」
「うん」
「札、使ったけどどこか痛い所はない?」
「強いていうなら、心?」
「ふっ、…なら、いいよ。生きてる証拠だ。私も痛い、お揃い」
「そんなお揃い可愛くないな」
清光にも1週間の休みを与えると伝えれば、謹慎かと少し気落ちしているようだったけど、思えば私が物心ついてからというもの清光だけは、近侍としてなんだかんだ仕事をしてくれていたことに気付く。
「困ったら、絶対頼ってよ、絶対。俺は絶対安静にするけど、主も絶対何かあったら、何もなくても俺を頼ってね?約束してよ?」
なんて布団の上で抗議されても怖くもなんともない。
「清光に頼ったら、清光絶対安静にならないじゃん」
「そうかもしれないけど」
納得のいかない表情。
それでも今回だけは折れてあげられない。
3人の今回の怪我は、特に…多分、私のせいだから。
伽羅と清光が目を覚ましても、2人の布団が片付いても手入れ部屋は開かない。
……鶴さんだけは目が覚めるのが遅かった。
太刀だからかもしれない。
そのうち安定が修行から帰ってくる。
手紙は3枚届いて、明日の今頃には到着するだろう。
「主」
「清光」
「手入れ部屋まだ開かないの?」