第8章 はち
「………妬いてるのか?」
「え?」
「なんで、俺が妬くんだよ」
「それは、……知らないけど。妬いてるんでしょ、主が他の男士と自分以上に仲良くなるのが。俺はその気持ちわかるよ、俺がそうだから」
しっくりときてる自分に、呆れる。
「無駄話もいいが…」
加州と俺の間を割って入った伽羅坊が、先にいる敵を斬る。
「わっ、…と、ありがと」
「ここは敵の本拠地ってことを忘れるなよ」
「すまない、伽羅坊」
「ふん」
「戻ったら、仲直りっていうか。ちゃんと話しなよ」
「そうだな、」
「なんか既視感。俺、おんなじようなセリフ主に言われたんだよね、最近」
「同じく、俺も同じようなことお前の相棒に言った気がする」
「素直になれないのは、初期刀に似るのか?」
話に混ざってきた伽羅坊に、俺と加州は顔を見合わせて笑う。
「大倶利伽羅がそんなこと言うなんて思わなかった」
「伽羅坊は意外とお茶目なんだよ」
「とっとと本丸に帰るぞ、火車切と手合わせの約束をしている」
「うん、そうだね。俺も安定が帰ってきた時の用意そろそろしないと」
…なんて、言ってた時だ。
空が染まって、穴が開く。
カキィィイイインッと、すんざくような音が響く。
「まさか、ここに来る…なんて、ね!!」
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「大将っ!!」
私ができる分の書類整理を終え、欠伸をしている時に駆け込んできたのは薬研。
「薬研」
「とにかく来てくれ!!」
言われるがままに手入れ部屋に入る。
鉄の匂いに、息が詰まった。
「……これ、どう言うこと?」
脈が打つ音が激しく感じる。
「参騎出陣」
「なんで?」
目を逸らしたみんな。
「検非違使が出たんだ。出る時代じゃなかった。…三振りでも、大丈夫なはずだったんだ」
「そう言う問題じゃないよね。加州が言ったの?……そう、わかった。札で治らない傷じゃない、程度は重症とかなり悪いけど。
みんなは通常仕事に戻っていい」
「大将、でも」
「……だって、みんながそんな顔してたら、3人とも気まずくてたまらないと思うよ。カッコつけて参騎で乗り込んだんでしょう?後は私に任せて、これでも審神者なんだから」
顔を見合わせたみんなが、1人ずつはけてく。