第8章 はち
「で、どうして参騎なんだ…よ!」
「敵さんの考えは分からないけど、雑魚でも数撃ち当たるって、算段かな。数は多いけど、敵さんそこまで強くないから、俺らだけでも行けるって判断」
狩って、狩って、狩まくる。
「戦ってる時って無心になれるよね。だから、アンタは今回みたいな時、絶対任務は遂行するでしょ」
「今回みたいな時」
「…とぼけるんだ?まぁ、いいけど。簡単に言うと、頭冷やせってこと」
「伽羅坊は?」
「付き添いと、後心配だからって」
「伽羅坊が?」
「そんな顔してたから、来る?って聞いたら、馴れ合うつもりないとか言うくせに、ついてきてくれたの!ったく、大太刀ってなんでこんなに硬いんだか!!」
「…らしくないな」
遠くで黙々と敵を狩る伽羅坊を盗み見る。
「ねぇ、鶴丸、主にあんな顔させるなんて、どういう了見?」
「俺が悪いって、前提なのか??」
血飛沫が顔を濡らして、鬱陶しい。
「さぁ、…ただ、朝の態度は気になったかな」
「別に」
「俺は、雨も好きだけど…湿気は嫌いなんだよね。髪がうねるし、キマらないし、服も濡れるし」
「それは嫌いって言うんじゃないのか」
「はっきり言わないと、伝わらないんだっけ?
俺、主人の泣き顔嫌いじゃないよ。弱ると幼い頃からのくせで俺に縋ってくる。それが心地良くないかって言ったら、嘘になる」
「歪んでやがる」
「知らなかった?…でも、笑顔はもっと好き。花が咲いたみたいじゃん?だから、笑ってて欲しい、本丸も晴れてるならそれがいいんだ。喧嘩してもいいけど、傷はつけないでやってよ」
「過保護じゃないか」
「アンタにそれが言えるの?」
刀身についた血を払って、さやに納めた加州が俺を強い眼差しで見つめる。
「江の奴らに関わったからって、俺たち離れすると思う?」
「見聞が広がるならいいじゃないか、将としては」
「ずいぶん聞き分けがいいんだ?」
「伊達に千年は生きてないだろ」
「千年も生きてるくせに、あんな顔させて自分もそんな顔して、情けないとは思うね」
「…」
「別にいいんだ、俺は。でも、この先もあんたを思って主があんな顔するのは嫌。ヤキモチ妬いて、周りにあんな態度とって、そうする前にやることあるんじゃないの?俺がアンタに頼んだお世話係だけど、取られたくないほど馴染んでるんだろ!」