第8章 はち
「お別れみたい」
「え、主俺を売るの??」
「絶対売らない」
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目覚ましは5時にセットした。
夜通しお話ししたから、起きれるか不安だったけど、目覚めはスッキリしている。
「おはよ、主早いね」
コソ練のために江の部屋あたりまで来ると、畑に行く準備をした桑名に会った。
「桑名も早いね」
「畑のためだからね。主も行く?」
「桑名…って、主。おはよう」
「雲さん、おはよう。雨さんも。雲さん、昨日はありがとう、眠くない?」
「頭、おはようございます!雲さん抜け駆けですか?」
「な、やめてよ。雨さん、そんなんじゃないって」
「雲さんがただそばにいてくれるって、プロポーズしてくれたから」
「犬として!ね!」
「隅に置けないね、雲くん。そうだ、みんなで畑に行くのはどうかな」
「私は季語探しがあるので、これで。頭、ではまた後ほど」
さすが忍び、音も立てないでどこかに行ってしまった。
「雨さん俺も」
ぎゅっと尻尾を掴む。
「主、離してくれない?」
「ずっとそばにいるって言った」
「ぐ……っ」
「畑いこうよ。桑名の畑で採れたお野菜美味しいじゃん」
「えええええええええ」
「とにかく行こ?」
「雨さぁああん」
泣きべそをかきながら、桑名と私に渋々ついてきてくれた雲さん。
「はい、じゃあ雲くんはこっち」
「俺、お腹痛くなってきたんだけど」
「主はこっちね」
「うんっ」
畑仕事は実際ちょうどいい運動になった。
体を動かすと、頭だけで考えていたごちゃごちゃとしたものが整理されていく感覚がある。
「たまに畑手伝おうかな」
「主ほんとう?」
「うん」
「でも、学校だっけ?あるんじゃないの」
「わがまま言って、少し休むことにした。これでも勉強できないわけじゃないから」
「それは、みんなも喜びそうだね」
「喜ぶかな?」
「僕も含めて、雲くんもだけど、みんな主がだいすきだからね。この本丸のみんな」
顔すら見ずに、農作業をつづけながら、何当たり前なことを言っているんだというテンションで言ってくるから、驚いた。
「江の子たち、優しくて困るな」
「じゃあ厳しくしようか?」
「辞めな、主。桑名の厳しいは本当に厳しいから。優しいの顔だけだから!」
「雲くん?」