第7章 しち
「主、体調はどうだい?」
近寄ってきたとき、スッと目を逸らしたのは私。
うまく目を合わせられない。
だから、作業に集中してる風を装って答える。
「あ、うん。大丈夫。…鶴さんが運んでくれたんだよね?」
「いや、…清光だな」
その言葉に驚いて、鶴さんを見上げる。
どうして嘘つくのって、言いたかった。
「でもあれだな、ほんと。元気になってよかったぜ」
ねぇ、鶴さん。
自分で思ってるより、鶴さんは表情を隠すの下手みたいだよ?
それとも、私が意識しだしたから、気付いただけ?
「鶴さんが助けてくれたと思ったから、清光にありがとうって言い忘れた」
「どうして俺だと?」
「どうしてだろ、夢なのかな」
「夢だろうな」
鶴さん、誰を見てるの。
どうして、私を見る目が悲しいの?
「夢で見るくらい、鶴さんを」
…無理だ。
この気持ちを茶化すことなんかできない。
「さ。無駄話はおしまいにして、安定の送迎会の準備終わらせないとな」
鶴さんも聞こえなかったフリをする。
じゃあ、そういうことにしよう。
口走りそうになった言葉を飲み込む。
「うん、そうだね」
"無駄話"
「ま、話しかけたのは俺だけどな」
「そうだよ。全く、口じゃなくて手を動かさないとね」
小骨が喉に刺さったみたい。
痛くて、取れない。
「鶴さん、あっち手伝ってあげたら?」
「そうするとしようかな」
変に意識していたのは、私。
「この辺でいいんじゃない?みんな、安定のためにありがとう。片付けしたら、呼んでくるね」
おう、とか、頼んだ!とか、みんなが元気よく答える。
その時だって、ずっと鶴さんを目で追ってた。
初恋は叶わないないらしい。
じゃあ、この恋もやっぱり叶わない。
刀と人間の恋なら、そのほうがいいのかもしれない。
「大将、体調でも悪いのか?」
薬研が近くにいたことにさえ、今気付いた。
「ううん」
「そうか、無理するなよ」
みんなが席につき始めていて、私も用意された席に座る。
刀数が多いから、ズラリと並ぶテーブルでは、遠い席に座る刀だってもちろんいるわけで。
…でも、避けられてるのかなって思ったのは、いつも一緒にいる伊達じゃなくて、少し遠くに座る三条の席の近くに鶴さんがいたから。