第7章 しち
「主、目が覚めた?」
はっきりしていく視界。
見慣れた天井に安心する。
「…鶴さんは??」
「もう、目覚めてすぐそれなの?」
「だって、泣いてたから」
「気のせいでしょ」
私の布団の脇で、洗濯物を畳んでいる清光。
「手伝う」
「いいよ、休んでおきな。…あのさ、主」
「ん?」
「起きてすぐ悪いんだけどさ、最近なにか変わったことない?」
「え、変わったこと…?」
なぜか鶴さんの顔が浮かんで、じんわりと熱くなる。
「清光、…誰にも言わない?」
「うん、当たり前じゃん。主が内緒にしてほしいなら、言わない」
「………鶴さんのこと、好きなの。多分」
「そっか」
「まずい、よねぇ」
「今はそれでもいいんじゃない?主はまだこれから先、いろんな人間にも刀にも出会って行く。今は鶴丸でも、変わるかもしれない」
清光が言うなら、そうなのかもしれない。
「でも、そっか。…やっぱり鶴丸なんだ」
「やっぱり?」
「ううん、こっちの話」
「安定の修行の件もあるのに、こんなふわふわした気持ちでいていいのかなって」
「その分、俺が地に足つけとくから大丈夫。でも、主気をつけてね」
気をつける?
「刀と人間の恋は、禁忌…ってこと」
「いけないってことだよね」
「そう言われてる。だから、気付かれないようにね」
「うん」
「まぁ、俺はどんなことがあってもそばにいるから。この先もずっと」
「うん」
「だから、どうしようもない時は抱え込まないで、言ってほしい」
「うん」
「じゃあ、この話はおしまい。洗濯も畳終わったし、主が起きられそうなら、大広間に行く?」
「大広間で何かあるの?」
「夕飯」
「もうそんな時間?あ、安定の送迎会」
「そういうこと。お昼も食べてないから、お腹空いてるんじゃない?」
確かに、清光に言われて妙にお腹が空いていることに気付く。
ぐ〜…。
「ふふっ、お腹の虫も鳴いたね。行こっか」
清光が洗濯物を片付けるのを手伝いながら、大広間に向かう。
みんながわちゃわちゃと準備をしているのに、混ぜて貰う。
清光に伝えたからか、奥で作業している鶴さんを見ても、変に意識したりしなくてすんだ。
…と、思ってると目が合う。
パチっと、数秒間。
その瞬間、ゆっくりと向かってきた鶴さん。