第7章 しち
「…鶴丸、何の用」
清光を追いかけることもできたのに、しなかったのは少しの気まずさがあったからだ。
「すまない、呼び出して。まずは修行の件、よく決心したな」
年長者の言い方をしてくるのが気に食わない。
「昨日の鶴丸の戦い方見たからだよ」
「俺のせいか」
「その言い方はずるいんじゃない」
「年甲斐もなく、無茶をした自覚はある」
「僕が担いで帰ったんだからね」
「世話をかけたな」
あんな無茶な戦い方、全く誰に似たんだか。
でも、誰かさんと違って鶴丸は、案外素直だ。
だから僕も素直に答える。
「………って、鶴丸のせいにしたけど。
僕は、主の件があった時、1番戦いたかったのは清光なんじゃないかって思ったんだ。
僕が残ったけど」
「あぁ」
「そういう作戦だったし、…だけど、清光は初期刀だしさ」
「……」
「僕がもう少し強ければ、最後まで清光も心置きなく戦えたんじゃないかって。
じゃあ、清光より強くいなきゃって。
僕の背中を預けられるのは清光だから、清光にもそう思って欲しくて…」
言い始めたら止まらなくなって、これ以上言ったら辛気臭くなってしまうと思ったから、言葉を発するのをやめた。
「………十分じゃないか」
鳴き声みたいに小さな声で言うから、僕はしっかり聞き逃した。
「え?」
「安定、わかってると思うが、ちゃんと気持ちは伝えた方がいいぜ」
鶴丸の揺れた瞳。
「口を出してすまない、ただ覚えがあったからな」
「覚え?」
ねぇ、それ。清光が言ってた"好きな子"と関係あったりする?なんていくら僕でも聞けない。
「昔話さ。…だから、言えるうちに言うんだぞ」
"俺はもう言えないから"などと続きそうだな、と憶測をつける。
「鶴丸もね」
「俺?」
「昨日の戦い方、僕はあんまり好きじゃないなって」
「……そうか」
「清光の戦い方に似ていたから」
「光栄じゃないか」
本当に思ってるの?
まぁいいや、鶴丸の"言えるうち言わないと"って考えも分かるし、主にも同じようなこと言われたし。
これまで長い付き合いなのに、清光に相談しなかったのは確かによくなかったかもしれないと思い直す。
「ねぇ、鶴丸。主と清光のこと、お願いね。僕がいない間」
「あぁ、任せろ」
なんて言ったくせにさ。