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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第7章 しち


 その日は、鶴さんと寝た。

 刀なのに暖かくて、優しくて、やっぱり私と同じなんじゃないかって、そんな罰当たりなことを思った。

 彼は刀剣の付喪神で、想いを寄せる相手がいて。
 きっとそれは、同じように尊い存在の方で。

 そんなの勝てるわけ無いじゃんってそう思ってる自分に驚いた。

 鶴さんの鼓動も、息遣いも、もう意識しちゃってる。

 包まれた腕が思ったより逞しいとか、意外とすっぽり収まっちゃう自分の身体とか、もう全部が嫌になる。

 やけに耳障りがいい声とか、笑顔とか、もうむけないで欲しいと思いながら、そうなったらなったで泣いてしまいそうなほど、引き裂けそうなほどの胸の痛みを感じるんだろうと、想像がつく。

 これじゃあまるで、"好き"みたいだ。

 知らなかった感情を一気に知っていく。

 もし私も、鶴さんも普通の人間だったらこんなこと思わないんだろうか。鶴さんが特別だから、そう思うのだろうか?

 …そもそも、私は本当に鶴さんが好きなのか?

 絶対的なピンチを助けてもらって、その気になっているだけで、要は吊り橋効果みたいなことで、…じゃあ、安定や清光に対してもそうじゃなきゃいけないんじゃないか?

 そもそも、好きだ!って思ったのだって彼にそう言う存在がいるって知ったからだし、それってつまりは、与えられたおもちゃが取られそうになって駄々を捏ねてる子供と同じなんじゃないか?

 いや、おもちゃっていう言い方は流石に良くないけど。

 「…じ、…主!!」
 「はい!!」

 起きた頃にはもう鶴さんの温もりはなくて、そのことに安堵している自分と、目覚めるまでいて欲しかったという自分と、矛盾した気持ちが残る。

 「おはよう」

 戦闘服姿の安定。
 改まってどうしたんだろうと思いながら、その姿をくまなく見る。

 「おはよ、安定。…どうしたの、朝から」
 「うん、早くにごめんね。その、今日は、大事な話があるんだ」

 その一言を聞いて、なんとなく察した。
 うちの本丸では、初めの一振りになるのかとどこか察した。

 「…それは、あれだね。ごめん、支度してちゃんと聞いた方がいいよね」
 「そうしてもらいたい」
 「すぐ用意するね」
 「うん。外で待ってる」

 少し緊張した面持ち。
 おかげで鶴さんの様子は聞けなかった。
 
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