第7章 しち
「まぁ、待ってようぜ」
「うん」
「で、遊んできたんだろ?」
「うん。初めてカラオケに行ってきた」
「からおけ?」
「うん、大きい液晶があってね、マイクで歌うの」
「へぇ、楽しそうだな。江のみんなが喜びそうだ」
「大広間に一台置いてもいいかなって思った。みんな宴会好きでしょう?」
「いいな、それ!!」
頭につけた飾りを揺らしながら、楽しそうに話を聞いてくれる。
「…さだ」
「ん?」
「…鶴さん、大丈夫かな」
言った時、戻ってきた伽羅。
「食べろ」
セリフとは裏腹、コトッと静かにおいたのはティラミス。
「あ!今日のおやつ。みっちゃんが作ったんだよ!なんだっけ、ピラティス?」
「ティラミスだろ」
「二人は食べたの?」
「おう、」
「あぁ。アンタの分だ」
「鶴さんが頼んだらしいぜ。よく知ってたよな、こんな洒落たの」
「二人も食べる?わけっこ」
「俺はいい。アンタが食べろ」
「そうそう、俺たち食べたし。しかも、今日唐揚げって聞いたからさ、腹すかせとかないと!」
変わらない二人のやり取りに、なんだか落ち着いていく。
「そう言えば火車君は?」
「上杉の茶会で、伽羅はお留守番くらってんだよ」
「ち」
「そっか」
ティラミスは、ほろ苦くてでもすっきりした甘さで溶けていく。
「美味しい」
「だろ?!みっちゃん聞いたら喜ぶな、直接言ってやってよ」
「うん」
呼び鈴が鳴る。
「帰ってきたかもな」
「うん」
無言のまま立ち上がった伽羅と貞と三人で、玄関に向かう。
人だかりの奥、見えたのは赤。
…あか?
「主、ごめん」
安定の一言が重い。
「鶴丸なんだけどさ」
髪まで赤く染り、ぐったりとして安定におぶられている。
息を呑んだ。
「手入れ部屋に、急いで」
「ちょっと待って!違うんだ、どっちかと言うと、お風呂が先…かも」
「え?」
「全部返り血。多少怪我はあるけど、大した傷じゃない。
帰るって言ってもきかなくてさ、止まんなくてさ」
「うん」
「ちょっと本気で頭突きしたら、こうなっちゃって」
「お前バカなの?」
安定にそう返したのは確か清光。
「ちょうど良かった。大倶利伽羅に太鼓鐘、鶴丸お風呂にお願いできる?」
「もちろん」
「あぁ」