第7章 しち
"鶴丸の好きな子"
"主に似てるんだって"
…だからか。
だから、やってくれたんだお世話係。
誰かに重ねてたんだ、私のこと。
「…主?」
「…」
「どうした?」
「ううん、走ってぶつかったから…その、驚いた。ごめんね、怪我ない?」
「あぁ、俺は大丈夫だ」
「あのね!行くことにしたよ、友達と。
短刀のみんなには悪いけど、雨も続いたし延期しようって今から伝えようと思ってたの。
急がなきゃって、思ったら、…走っちゃった」
あぁ、情けない。
毅然としなきゃ、どんなことがあっても。
「そうか、明日は俺も非番だから」
「あ、送迎?いらないいらない!言ったじゃん、新しい友達って。
びっくりしちゃうよ、鶴さんみたいなイケメンが学校だけじゃ無くて、遊びにまで送りにきたら」
「でも主は未成年だろ、それに」
「…そんなことされたら、浮いちゃう。せっかくできた友達なのに。それにほら、今から鶴さんお仕事でしょ。大丈夫、鶴さんが買ってくれたお洋服や靴、それからバックも私を守ってくれるから」
納得いかないような顔をしつつも、時間だからと行ってしまった鶴さんの背中を見送る。
鶴さんへの宣言通り、短刀の子達に伝えればやはりそうかと気落ちしながらも、納得してくれた。
短刀たちの騒ぎを聞きつけてやってきた清光に、遊びに行く旨を伝えたら、目を輝かせるほど喜んでくれた。
人の友達がなかなかできなかったこと、気にしてくれていたらしい。
…だから清光にも、言えなかった。
言いたくなかった。
言ってしまえば傷つくこと、どこかでわかっていたからかもしれない。
翌日、降り続いていた雨が止んで、わたしは出かける支度をする。
「防犯ブザー持ったね。ティッシュとハンカチ、それから携帯に、端末。うん忘れ物ないね」
「もう、何回め?」
「だって仕方ないじゃん、初めてなんだから」
「清光が行くわけじゃないでしょ。変じゃない?似合ってる?」
「凄く可愛いよ。鶴丸にも見せたんでしょ?」
「ううん。寝てたから、そのままにしてきた。
どうせ帰ってきたら見せられるし、じゃあ、留守をお願いね」
付き添いのないお出かけは、初めてだった。
「任せておいて、楽しんでね」
「うん、ありがとう。5時までには帰る」
「はいはい、ゆっくりでいいから」