第7章 しち
「今日はどんな驚きがあった?」
帰り道、約束の寄り道のためにいつもとは違う駅に向かう。
「……友達ができたよ」
「凄いじゃないか!!」
ほら、話のネタには丁度いい。
私が楽しいと、鶴さんやみんなは喜ぶ。
みんなといる方が、よっぽど楽しいのに。
「日曜日遊ぼうって誘われた」
「へぇ!…そっか。よかったな」
「日曜日は、短刀のみんなとピクニックする予定だから、断ろうと思ってた」
「そんなの、アイツらに言ったら気にすると思うぜ?」
「だから、言わないでって釘さしてるつもり」
「気がのらないのかい?」
「…べつに」
好きとか嫌いとか、まだよくわかんない。
鶴さんやみんなは好き。
後学の為にと乱ちゃんをはじめ色んな子が少女漫画を買ってきたりしてくれるけど、正直興味ない。目は通すけど。
「男の子もいるって言ってたから」
「そうか」
「変なの」
「変?」
「鶴さんは、歌仙や長谷部や清光と同じくらい、過保護だと思ってたから」
「うん」
「年頃なんだから、ダメって言いそうだった」
「あぁ、なるほど」
顎に手をやって考え込む仕草がわざとらしい。
「ま、主の交友関係に口は出さないと思うぜ、よっぽどじゃなきゃ。
それに、年頃だからだろ」
「どういうこと」
「例えば誰かを好きになったりさ、」
「私が好きなのは本丸のみんな、鶴さんもそう」
…ねぇ、なんで悲しい顔するの。
「それは家族としてだろ。家族では教えてやれない感情だってある。それに、俺たちは刀だ。大きな声では言えないけどな。
俺は…俺たちは、主がたくさん経験してたくさん学んで、あぁいい人生だったって、そう思えるようにして欲しいんだ。
主は若いしな」
昔から思ってた。
「日曜日、行った方がいい?」
「それは主が決めることだ」
鶴さんと、私の間にある大きくて見えない壁。
「そっか」
本丸のみんなや、これまで出会ってきた人達の間にある壁。
それは大きくて果てしない。
いくら清光が、みんな同じでどこか違うと言っても、私は絶対的に違う。
「鶴さん、服買いにいこ」
「服?」
「日曜日、お出かけだから。私、同級生と出かける服ないから。鶴さん選んでよ」
「仰せのままにって、言っても俺はあんまり自信ないなぁ。アイツら呼ぶか?」