第7章 しち
「うちの鶴丸?…なに、あいつだとダメなの?」
怪訝そうな顔する安定、目を逸らす俺。
「…よし、じゃあ僕聞いてくる。つるま」
はがいじめして、口を塞ぐ。
「馬鹿お前、本当に本人来たらどうするんだよ!」
「だって清光話したくないんだろ、じゃあ直接本人に聞くしかないじゃん」
「なんでそうなるんだよ!」
「とりあえず、落ち着いて座りなよ。本人に聞かないから」
「それはお前が!…もうやだ本当」
「で、鶴丸だと何か不都合なの?」
「……はぁっ」
「言えない事?」
「アイツ、ドロップじゃん」
「そんな奴この本丸にアイツだけじゃないじゃん」
「安定、ドロップの仕組み知ってる?」
「知らないよ、興味ないし。仲間になったらどこ産なんて関係ないじゃん。本丸で過ごす以上、家族なんだから」
自分の分のおはぎを平らげて、俺の分にまで手を出しそうだったから制止する。
「俺も興味なかったんだけどさ、本で読んで」
「どんな?」
「政府でなんらかの理由で回収された刀が、ドロップに使われてるんじゃないかって」
「うん?」
「他の本丸で物語を紡いできた刀が、一切の記憶を消されて、刀の状態に戻された状態で、また別の本丸に引き取られる。
引き取られるために、落とされる。ドロップとして」
「もしそうだとして、何か問題でもあるわけ?」
「え?」
「刀は物。僕たちは消耗品、こうしてる今もどこかで歴史改変が目論まれてる。人の数だけ物語があって、正義や真実は一つ一つ違う。
…だから、僕たちの戦いは無くならない。一方で資材には限りがある。それを考えたら、あり得ない話ではないと思うけど。そしてこれは、僕や清光にだって言える事だと思う」
…今回は、安定が正しいと思う。
俺だってこれが主のことじゃなかったら、…鶴丸のことじゃなかったら、そう思えたのかもしれない。
「もし。たとえば今の状態で、何かしらの理由で、同じように政府に回収されて、記憶を消されても安定は同じこと言えるの」
「そんなの、歴史を守るためだろ、口酸っぱく僕に言ってたのは清光の方だよ」
「じゃあ、…もし消された記憶が残ってしまったら?機械ですら完璧じゃないんだ、あり得る話だろ」
「何を今更、今までだって変わらない。持ち主だった人間が1人増えたってだけだ」
「安定…」