第7章 しち
「清光、入るよ」
審神者部屋の隣いつの頃から執務室化した空き部屋で、書類を読んでいた俺。
正直全く頭に入ってこない。
「安定、どうぞ」
「よくやるね、お前も」
お皿に乗ったおはぎは、今日のおやつか。
「まぁね。俺が1番慣れてるし」
「お茶淹れてきた」
「うん、見ればわかる。ありがと」
「清光、疲れてるだろ」
「え?」
「言い方に棘がある。頭の下にうっすらクマ。休憩しなよ、今僕しかいないし」
そう言って俺から書類を取り上げて、軽く机を片付けた安定。
「やっぱり、悩んでるだろ。主のことかなって思ったけど、そうじゃないみたいだから、…知ってるだろ?こう見えて僕が口固いこと」
「お見通しってわけね」
「うん。何、なんかあったの。誰のこと?」
「誰のことっていうか、…そうね。主が大きくなったって話してただろ、誕生日に」
湯気を立てたお茶。
ふんわりと甘い匂いのおはぎ。
「うん」
「昔で言えば、主は成人の歳を過ぎてる。そしたら急に怖くなったんだよ、安定言っただろ。主の相手は主より長生きする人って」
「あぁ、言ったね」
「それって俺たちじゃんって」
「うん。まぁ、刀と人で禁忌だけどね」
「禁忌って言われてるけど、でも俺たち人の身を得て、気持ちを持ってるわけじゃん。主には幸せになって欲しいし、俺は主が好きになった相手が例え生活力皆無の三条の誰かだとしたって、応援しちゃうんだよ」
…と、言ったところで笑いを堪え始めた安定。
「うん、……うん。続けて」
「でも俺、…俺、みんなのこと大好きだし大切だし、でも主のことはそれ以上」
「あははっ、…ごめんっ、無理!」
「安定」
「ごめん、だってお前それってヤキモチって事だろ」
すんっと、冷静になる俺。
俺、真剣に話してたよなって、盛大な勘違いをしている安定を見たら、物凄くどうでも良くなる。
「お前馬鹿なの?脳筋」
「それは国広達だろ。僕が脳筋ってどういうことだよ」
「だから、言ったじゃん。俺は主が誰を好きになっても応援するって!それが例え三条の奴でも他の審神者でも、他の本丸の刀剣男士だとしても!最低な奴ならぶった斬るけど、そうじゃなくて!
もしうちの鶴丸にそんな気持ち持ったらどうしようって、これはヤキモチとかじゃないんだ。そんな簡単な話じゃなくて」