第6章 ろく
俺を清光と呼ぶようになった主。
"頼ってね"なんて言われた時にはもうダメだ。
「いい子に育ってくれて、俺本当に嬉しい」
ボロボロ溢れてくる涙をもう自分で止めることはできない。
昔は俺の後ろに隠れてばっかりだったのにさ。
「清光、鶴さんと同じくらい泣き虫だもんね」
「え、比較対象鶴丸なの?」
「うん。鶴さんにもお世話係してくれてありがとうって言ったら、泣いてた。俺に言う前に、初期刀に言ってこいよってさ。
もちろん、清光に1番に言うつもりだったけど、清光何か考え込んでたから」
「そう、…もう、急に泣かせにくるなよな。嬉しいけど」
「ふふっ、ごめんね。安定もありがとうね」
「うん。これからもよろしく、主。さてと、僕は和泉守イジってくるから、清光のことよろしくね。また後で話そうね、ゆっくり」
「ほどほどにね、後でね」
座ったばかりだと言うのに、主に俺の隣を譲ったのはアイツなりの気遣いか。
「清光の隣、入りまーす」
「何それ俺の真似?」
「うん、ふふっ」
「可愛いじゃん。…どうしたの、主。何かあった?」
「清光の反対隣は私の特等席でしょ?」
「反対?」
「そう。隣は安定ね」
「そういうことか」
「うん。清光、…清光こそどうしたの。何か悩んでる?」
「悩んでないよ。…俺そんなに態度でてる?」
「ううん、ポーカーフェイス?で、なんだっけ。えっとー、冷静沈着だっけ?いつもはそんな感じだけど、今日は隣来ないし私が寂しくなっちゃっただけ」
「何その可愛い理由。俺可愛いしか言ってないじゃん、言われたいのに。…って、俺がいないと寂しいわけね。離れらんねぇじゃん」
「離れるつもり、あるの」
「ない」
「そっか。よかった」
静かに笑う主はあどけなさを残しながらも、大人のように綺麗に微笑んでいて、成長を感じずにはいられない。
…もし俺が、鶴丸だったら。
なんて、考えても仕方ないことを、俺は頭の隅で考えてた。
俺は主を愛してるけど、これが恋からくるものかと言われると多分、そうじゃなくて、草木や花を愛でるのと同じようなもので、この先もきっと変わらないと思う。
だけど、もしそうじゃなかったら、どうなんだろう。
「ねぇ。見て、清光」
「ん、なぁに?」
「鶴さんが」
もし、この先主が恋を覚えて…それが。