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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第6章 ろく


 それが、…。

 音が止まる。
 嫌な予感がした。

 それは、多分、あたるんだ。

 「清光、鶴さんこっちに呼ぼうよ、昔話しよ!」

 あぁ、俺心配だな。
 本当に心配。

 「ねぇ、主」
 「私、呼んでくる」

 俺を振り向いた主が、見たこともないような顔で笑う。
 手を伸ばしてもすり抜けていくような、そんな感じがした。

 だめだよ、主。

 だって、俺、聞いちゃったから。
 俺、主に悲しんでほしくない。

 それこそ、読んだよ。
 誰かを想う相手を好きになってしまったら、それってすごく苦しいことだよね。

 俺、嫌だよ。

 主が誰かの代わりになるなんて。

 そんなの、耐えられない。
 泣きたくなる。

 「ちょ、主そんなところ引っ張らないでくれよ!」
 「お待たせ、清光」
 「よぉ、加州。呑んでるか」

 少しほろ酔いで、主に手を引かれた鶴丸は少しふわふわしている。

 俺の隣に座った主、その隣に鶴丸。
 談笑する楽しそうな声が耳に届く。

 「…清光?」
 「…ん、なに?」

 堪えるので必死だった。

 「だから、参観日の日にさ。二人で来てくれたことあったよね。鶴さんの奢りでフラペチーノ頼んでさ」
 「あぁ、鶴丸が主に絵をもらって泣いた日ね」

 俺が話にまざったのを、ホッとした表情で見てた鶴丸。

 昔、聞きたがったのは俺だった。
 自分から馴染んでこない鶴丸を、どうにかこの本丸の輪に入れたくて。
 なんで今更なんだよ、なんで今更。

 「そんなこともあったなぁ、しかし、泣いたのは俺だけじゃないだろ」
 「あぁ!たしかにっ、"鶴丸だけずるい〜"って、長谷部と清光が言うから、描いて渡したら二人も泣いてた。
 そこからしばらくお絵描き流行ったよね、懐かしいなぁ」
 「もう描かないのかい?」
 「うん。描いてーって、泣かれたら描くかも。薬研とか上手だったよね、人体の仕組みとか」
 「あれはもうお絵描きの範疇じゃないな」
 「それを言うなら、まんばちゃんもじゃん。錦絵描いて、みんなにひかれてなかった?」
 「アイツは職人気質だから」
 「言えてる。イラストは清光が上手だよね、今でも」
 「今度おしえてくれよ、加州」

 ねぇ、鶴丸。
 今どんな気持ちで主と話してるの。

 ねぇ、教えてよ。

 ねぇ、主。
 主はこの先誰を愛すの。

 「仕方ないな」
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