第5章 ご
…と、加州に主の世話を押し付けられて数時間。
押し付けられては、言い方が悪かったかもしれない。
俺の膝の上で眠る主の髪を梳く。
空いた手で持つのは、先ほど言われた"プリント"。
内容は、主が前に話していた参観日の日程だ。
「参観日、…ねぇ」
俺よりも行きたい奴がいるんじゃないかとか、そんなことを考えつつ、世話係は俺だしとそのプリントを仕舞う。役得ってこう言うことか。
「ん…」
「悪い、起こしちまったか?」
小さな声で話しかけるも、髪を撫でるともう一度眠りについた主。
寝ぼけながら、俺の手を取る。
温かく、小さい手。
「こんなの、離れられないじゃないか」
…離れるつもりもないが。
「主、…できるだけゆっくり、大人になってくれよ」
俺の手で、護れるままでいて欲しいくらいだ。
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「つーるーまーるー、時間なんだけど」
「あぁ、今行く」
「開けるよー、って、何その格好」
全身真っ白い正装に身を包んだ俺を怪訝そうな顔で見る加州。
加州は意外にもシンプルな格好をしている。
「正装だが?」
「馬鹿なの?…いや、仕方ないか」
「参観日とやらは、晴れの場だろう?」
「晴れの場っていうか、結婚式でもないんだから。浮くよ。主が可哀想。ったく、これとこれにしな、悪いこと言わないから」
ジャケットにシンプルなパンツ、言われるままに従う。
「本当にこの格好でいいのか?失礼はないか??」
「うるさいよ、お兄ちゃん嘘つかないから。ほら、着たら行くよ」
今日は約束の金曜日だ、自分が浮かれていることに少しだけ驚いている。
「全く、新作のフラペチーノ飲みたかったのに。帰りかー」
そんなことを言いながら、少しがっかりしている加州と刃生初めての参観日に向かう。
「いい、鶴丸。俺から離れないでよ、目立つんだから」
「俺だって、現世は初めてじゃないぜ?」
「いいから、お兄ちゃんの言うこと聞いてくださーい」
少しムッとしながら、加州の隣に立つ。
まぁでも、主の顔を見たらそれすらどうでも良くなる。
端末の録画機能を使って、撮影をする加州を横目に俺はただ一生懸命な主を見ていた。
時たま俺たちを見ては小さく手を振っている。
正直言って、主が1番可愛い。