第5章 ご
「ありがとう、主」
燭台切に抱きしめられて、ご機嫌の主。
全く、これだから伊達男は。
「今日はポタージュにしようかな、主が美味しいお野菜を貰ってきてくれたからね」
「うん!!」
「加州君もありがとう」
「いーえ。鶴丸のついでだから」
「え?また何かしたの」
「やらかした前提なんだ」
「そう言うわけじゃ、ただ心配なだけだよ。それによって、加州君に迷惑をかけている時もあるわけだし、身内としてはさ」
「迷惑なんて思ってないよ、ただ手のかかる弟だなと」
「ははっ、確かに。弟か」
「うん。家族にでもないと、枷にもならなそうでしょ。あの儚げ美人詐欺」
「まぁ、うちの本丸の鶴さんは確かに、放っておくとどこかに飛んでいってしまいそう」
「とんでいくの?」
寂しそうな顔、俺は見逃さなかった。
「大丈夫だよ、主。ものの例えだから」
「たとえ?」
「うーん、難しいか。とりあえず、大丈夫ってこと」
「うーん?」
「なんだ、みんな揃って俺の陰口か?」
「つるさん!!」
「待たせたな主」
燭台切からはなれて、迷わず鶴丸に飛びつきにいく主。どんだけ好きなんだよ。
「つるさんとんでいくの?」
「そうだなぁ、きみが一緒に飛んでくれるかい?」
「おそら、こわくない?」
「どうだろうなぁ」
「つるさんないちゃう?」
「泣くかもしれない、きみがいないなら」
「全く、これだから伊達男は」
「それを言うなら、光坊だろ」
「だておとこって、なに?」
「カッコつけ」
「美人詐欺だの、カッコつけだの、結構な言われようじゃないか」
「間違ってる?」
「間違ってないかもしれない。鶴さんはそう言うところあるよね」
「おいおい、光坊まで」
「主、ふたりとも酷いと思わないか?鶴さんを慰めてくれ」
ここぞとばかりに、主に泣きつく鶴丸。
ほんとそう言うところ、ずるいよね。
「あぁ、そうだ。鶴丸、来週の金曜予定空けておいてね。もちろん、当番も入れてはないから」
「ん?」
「主と約束してるんでしょ」
「鶴さんも隅に置けないね」
「詳細は後でプリント渡すから、確認しておいて。じゃあ、主、俺少しだけお仕事あるから、あと鶴丸に遊んでもらってね」
鶴丸に抱かれる主の頭を撫でれば、気持ちよさそうに笑顔をくれる。