第4章 し
《やっほー、鶴丸》
「あぁ、どうした」
《大丈夫かなって思って、初めて行った現世はどう?》
「驚きに満ち溢れているな。…ただ、空が近い」
《そう》
「晴れているはずなのに、こんなに近いと思わなかった。一つ、きいてもいいか?」
《うん》
「あの子が言っていた。ようちえんにも、ほいくえんにも行ったことがあると」
察しのいい加州が、少し言い淀む。
《そうね、…まぁ、コレでする話ではないけど、いっか。
…主ね、閏年の生まれなんだよ》
「それがどうした?」
《2月29日なんだ》
「いるだろ、そんな奴」
《主は特別なんだ。おんなじ2月29日でも、主は特別なの。産まれた時から俺らと一緒に育ったせいかもしれないけど、4年に一度しか歳取らないんだ。今は5歳。じゃあ、主と同じ生まれの人間は?》
「今は、20歳と言うことか」
《そういうこと。審神者は短命って言われてる。でも、主は4年に一度しか歳取らないから、少しだけ優遇されてるところもあって。…だから、期待もされててさ、その分色んな世界をみた方がいいって言うのがお上の考え。経験するために、現代の普通の子供と同じように幼稚園とか保育園とか行かせてもらってるんだけど、何分人間の成長は早いからね。同学年だけと学べないんだ、留まれて2年。それもギリギリなの》
可哀想と思うのは、なんだかきみに悪い気がして。
だけど俺はそれに返せる言葉を持ち合わせていない。
《もう少し大きくなったらまた少し変わってくるんだろうけどね》
「…そうか」
《だから、余計。俺たちがそばにいてあげなくちゃって思うんだよね。誰一人欠けずに》
「…」
《でも悪いことばかりじゃないよ。それは、鶴丸が主と考えてあげて》
「俺が?」
《うん。まぁ、鶴丸は今日が主の付き人初めてなんだから、少しゆっくりしてきたらいいよ。主と2人でデートなんて他のやつにならさせないんだけど。アンタだからね…あ、呼ばれたから切るよ》
「まて、要件は?」
《ないよ、ちゃんとやってるかなって言う確認。じゃあまたね》
嵐みたいな奴だと思ったことは内に留めておく。
…それにしても、そんなことがあるのか。
審神者と言えど、4年に一度しか歳を取らないなんてことが。