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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第3章 さん


 あぁ、どんなきみでも…なんて。

 『隙あり』
 「え?」
 『やっぱりこっちにしよう〜。伽羅に見せてくる!』

 駆け出してったきみが、歌仙に怒られるまで数秒。
 どんな顔をしていたか、俺には自覚がないが。

ーーーーー
ーー

 「…ちゃん!」

 “まるちゃん"って、誰だよ。たしかにきみの言う通り、俺をそう呼ぶ奴はいないな。

 切なくて手を伸ばす。
 思ったより収まりがいい。

 陽だまりみたいな匂いで、俺は目を覚ます。

 「まるちゃん、苦しい」

 …あぁ、そうか。

 「すまない」
 「きよが、おこしてきていいって。まるちゃん、ずっとおけがであえなかったから」
 「あぁ」

 きみはもう、"きみ"じゃない。

 胸が苦しい。

 「まるちゃん」
 「すまない…」
 「まだいたいの?」
 「…」

 ぎゅっと、小さな手が伸びて俺にしがみつく。

 「いたいのとんでけっ」

 ふわっと、優しい霊力が俺を包む。
 だから、余計泣きたくなった。

 「まるちゃん、ないてもいいよ」

 きみのちいさな手。
 俺が今度こそ護らなければならないもの。
 そんなこと、顕現した時からわかっている。

 「っ、」

 人の身を得る前も色々な主がいたはずなのに、そういうことに慣れているはずなのに、どうしてきみだけ心に残る?

 「きよもね、ないていいよっていってたよ。いたいときもかなしいときも、きよがいるときはないていいよっていってた。そばにいるって、いってた。
 だから、まるちゃんもがいるときはないていいよ」

 本当は聞かないふりをしていた方がいいのかもしれない。
 きみの優しさにつけ込むようなものだ。

 だけど耳が拾った音が、胸に残った。

 …そうか、やっぱりきみなんだな。
 真名も同じ。

 「ごめん、ごめんな」
 「まるちゃん」
 「独りにしてごめん。きみを、…っ、」

 誰より何より1番、君を俺が護らなければ行けなかったのに。
 
 「俺が、…るべきだった」

 ずしっと重くなっていく心。
 その時スパーンっと障子が開く。

 「はーい、グジグジタイム終了。主、俺と交代」

 きみの体温が遠くなる。

 「きよ!」
 「はーい。主歌仙達のお手伝いお願いできる?」
 「うん!でも、まるちゃん」
 「まるちゃんも、俺が連れてくからさ」
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