第1章 いち
『鶴丸国永だ。俺みたいのが突然来て驚いたか?』
"政府の"刀として、俺はあった。
目が覚めて俺が"初めて見た"のは、きっと主であるだろう男と、近侍を務めていた燭台切光忠。
『あぁっ、本物!本物だよ!!いやー!よかった!!この道のりは長かった!!
よかったなぁ!光忠!!貞や伽羅に伝えてこないと!!ということで、後は頼む!!』
『ちょっ!…あぁ、行っちゃった。いつもあぁなんだ。そそっかしくて、まぁそこも良いところではあるんだけどね』
『嵐のような男だな』
『はは。でもね、僕たち、本当に鶴さんを待っていたんだよ!』
『あぁ、悪い。待たせてしまって』
"初めての主"は、気さくで愉快な奴だった。
『これからよろしく頼む』
…仲間もいいやつばかりで、本当に毎日楽しかった。
そのおかげもあって、俺はすぐに打ち解けた。
『鶴丸、今日は第一部隊に入ってもらおうかな。伊達組で組むし、気心しれてていいだろ?』
『だが、光坊は近侍だろう?』
『あぁ。だけど光忠も道具だからな。たまにはちゃんと使ってやらないと、鈍ってしまっては本刃も本意じゃないだろうしな』
『誰が鈍だって?』
『光忠!違う!これは!!』
『心外だな。悪いけど、3日間はおやつは抜き』
『あははっ』
『ちょ、笑ってないで、助けてくれ鶴丸』
『君の分は俺が貰おう。出陣の命も受けたしな』
駆け抜けた日々は、瞬きの間くらいあっという間にすぎていった。
『…っ、はぁっ、』
俺が普通じゃないと気がついたのは、特がついた頃。
その頃から、夢見が悪くなった。
『鶴さん、このところ眠れていないのかい?』
心配そうに覗き込む光坊に、俺は何度も平気だと返した。
初めのうちは、本当に平気だった。
『夢を見るんだ』
『夢?』
『起きると忘れている。けど見ている間は、また同じ夢だと思うんだ。何回も見てると、流石にしんどくてな』
俺の霊力を視た主はその乱れが原因かもしれないと、落ち着くまでの応急処置として、俺に近侍を命じた。
俺の霊力を主の霊力で抑え安定をはかるためとかなんとか、光坊もそれがいいと承諾してくれた。
…でも、結果は変わらなかった。
夢が鮮明になったのは、光坊が極みの修行から帰って来た頃。その頃にはもう、俺自身の不調を隠すのが得意になっていた。