第11章 じゅういち
どうしようもなく、泣きたくなった。
「清光いいって…言ってた。私がそうしたいなら、いいよって」
俺は、動けなくなった。
もし、この本丸に顕現したばかりの頃の俺ならそうして欲しいと頼んだだろうか。
「鶴丸、…鶴丸が言いたかったことなんとなくわかるよ。
鶴丸が出した手紙は、きっと昔の私に届いてて、その私とは違う私と過ごしてたから、帰ってこられなかったんでしょう?」
なんて言葉を返していいかわからない。
「」
「名前、教えたっけ」
「…昔」
「そっか。…真名使うまでもないよ。私は私を隠せるし、鶴丸の望んだ"私"になれる」
力強く君を掴んでいたはずなのに、掴んでい無いほうの君の手が俺の手に触れると案外簡単に解けて、あぁ、またすり抜けて行くのかと思った。
「今日が終わる前に、答えをちょうだい?…チャンス逃したら、また4年後だから」
俺に向けて綺麗にほほえんで、君の頬に伝う涙が嘘のように思えて。
…待て。
どうして俺は、流されようとしてるんだ。
君に伝えるために帰ってきたのに。
ダメじゃないか、これじゃあ。
彼女が背を向ける瞬間、スローモーションに見える。
「…」
こんな、呼び止めるだけじゃダメだ。
ぎゅっと腕の中に閉じ込めて仕舞えば、それは案外簡単だったことに気づく。
「ごめん、ほんとうに。ごめん。不安にさせたのも、言い訳じみたこと言ったのも。
ごちゃごちゃ言う前に、ちゃんと伝えなきゃ不安になるよな」
ダランと垂れ下がった腕。
君はやっぱりか細く、頼りない身体で。
「違うんだ。魂の形が同じとか、過去のきみとか、本当に関係ないんだ。
俺が今共にありたいのも、振り向いて欲しいのも、今の君なんだ。
好きなんだ、大切なんだ。何よりも。
君に護られて先に逝かれるのは嫌なんだ、だってそうだろう?俺はここに顕現して初めて君に出会って、君がそばにい無い時間を今の俺はしらないんだぜ?そんなの、一生知りたくないだろ」
いなくならないように、すり抜けて行か無いように、確かめながらそっと力をこめる。
「消えるとか、変わるとか言うなよ。プレゼントは極めた俺がいいって言ったの、君じゃないか。だから極めたんだ」
支離滅裂、本当にかっこがつかない。