第11章 じゅういち
「どうしてまっすぐ伝わら無いんだ」
「…鶴丸があんぽんたんだから」
私の言葉に鶴さんが悲しそうに笑う。
「俺のせいか」
「…そうだよ。ほんとに、意味わかんない。彼女彼女って、違う子の話するし、知らない記憶流れてくるし、口は勝手に動くし」
「え?」
「リンクしてた。鶴丸の言う彼女と、…お見送りの時は絶対私の言葉じゃないのに、鶴丸は私に当たるし。
軽くホラーだから。ありえないから、本当に見る目なさすぎる。
清光の方がぜんぜんいいのに」
「清光の方がいいのか?」
捨てられそうな猫みたいな声して、ずるい。
「清光の方がいい。私を泣かせないし、私を一途に好きていてくれる。
鶴丸みたいにどっちつかずじゃないし、修行からちゃんと帰ってきてくれたし、手紙くれたし、私を誰かと重ねたりしない」
「ぐぅの音もでない」
「っていうか、離して」
「無理だ」
堀川くんから教えてもらった技をここで使う時かと、力を込めようとしたのに、それよりも強い力で抱きしめられて身動きが取れない。
「変態」
「変態?!」
「叫んだら誰かしら助けてくれると思うけど」
「何でそうなるんだよ」
「好きでもない相手に抱きしめられたから、技かけようとしたのに、羽交締め解いてくれないじゃん」
「だって、逃げるだろ?…逃したくないんだ」
狙ってるみたいに、耳元で聞こえる甘い声。
そんなのに騙されるほどちょろくない。
「っていうか、俺のこと好きでもないのか?」
好きじゃないと突き放したいのに、言えなくて視界が歪んでく。
涙腺雑魚。
「…っ、」
「おーい、…って、君どうして泣くんだよ。好きでもないって言われた俺の方が泣きたい気分なのに」
嘘つき。
「?」
「嘘つき。修行で変な物でも食べたの?…ってか、なにそれ。いまさら、って何?……あぁ、そうだ。彼女も」
同じ名前だったもんね…って、言いたかったのに。
鶴丸に酷い言葉かけて、傷つけて、って、思ったのに。
ブーメランみたいに、自分に刺さってる。
「鶴丸に名前呼ばれるの嫌、自分の名前嫌いになりそう」
いたい、いたい。
「嘘。呼ばれ方なんてどうでもいい、主だし」
黙ったまま、ずるい。
「名前なんか、必要ないし。ずっと、主だし」
「すまない」