第2章 に
「さてと、主はお出かけの準備。貞ちゃんは遠征で、鶴丸は昨日に引き続き練度上げね」
「了解!」
「あい!」
「…鶴丸?」
「あ、おう。今日は静形の方だったな」
「そうそう。巴から聞いてたんだね。っと、その前に腹拵えしないと!腹が減っては戦はできぬって言うしね、大広間でみんな待ってる」
加州に抱き上げられた主はたいそうご機嫌で、一歩後ろをついて行く俺を見てニコッとする。
思わず頬が緩むのを、俺は多分隠しきれてないだろう。
広間に近付くにつれ、食欲をそそるような匂いが鼻を掠める。
「おはよ、鶴さん。よく眠れた??」
「あぁ。光坊早いんだな」
「そうかな」
「明日からは俺も同じくらいに起きるよ。朝からあんなふうに奇襲を掛けられたんじゃ敵わないからな」
「そういうわりに、嬉しそうだけど」
「ふっ、どうだかな」
昨日と同じように、本丸全員で食事を囲む。
この本丸の“決まり"だと、言っていたもんな。
「鶴さん」
「ん?」
「今日も練度上げ頑張ってね。お弁当用意してあるから良かったらお昼に、静形さんと食べてね」
「悪いな」
「違うよ、鶴さん」
「…あぁ、そうか。ありがとう」
「うん。どういたしまして」
ーーー
ー
光坊が用意してくれたお弁当を持って、静形と出陣する。
巴同様、今まであまり関わりがなかった。
「今日はよろしく頼む」
「あぁ、こちらこそ」
名前の通り、物静かな男だと思った。
だが、敵を一振りで薙ぎ倒す姿はやはり圧巻で、見ていて関心する。
「一旦切り上げよう」
「あぁ。…巴も凄いと思ったが、やはり凄いな、薙刀連中は」
「鶴の、お前も昨日顕現したとは思えないほどの働きだったぞ」
「そうかい?…ははっ、でも、もっと頑張らねぇとな。本丸の奴らと差が空きすぎてる」
「焦りは禁物だ」
「そういうわけじゃない、ただ。…あんなに小さいと思わなかったんだ」
「主か?」
「見下してるとかそういうんじゃなくて、1番"近くて"思い出しちまう。これから歳を重ねて同じ歳になった時を考えると、今だから、もっと何か出来るんじゃないかって。
俺は、護られたいわけじゃない、だから、…だから、焦ってる訳じゃなく、確実にあの頃を超えなくてはならないと」
「鶴の」
「…っ、悪い。やっぱり、焦ってるみたいだ」