第11章 じゅういち
「俺、敵に塩を送る趣味ないんだけど」
「敵じゃなくて、可愛い弟分だろう?」
「調子のりやがって。まったく、鶴丸のフォローは骨が折れるんだからな?」
「そう言ってくれるなよ」
「大体、抱きしめたんならごちゃごちゃ言って無いで、好きって言えよ。相手に御託並べさせる前に、自分の気持ちちゃんとぶつけて説き伏せろよ。先陣切って空気掴むんじゃないの?」
真剣な瞳が俺を捉える。
「護られたく無いわけもちゃんと説明しないとな」
ぽんっと肩に乗る掌。
「頼もしくなったところ、見せてみなよ」
「あぁ」
「いまかくれんぼしてんだ。さっきまでは俺たちが鬼だったんだけど、みんな捕まえてさ。
隠れる奴と鬼、交代になったよって主に伝えにきたところだったんだ」
「なるほど」
「ということで、俺は今日の宴の支度もあるし、代わりに主探してきてよ。誰よりあの子見つけるの上手いのは、鶴丸でしょ?」
「…今もそうだろうか」
「弱気になってんなよ。彷徨う魂のなかから、見つけ出したのはアンタでしょ」
「そうだったな」
「じゃあ、あとはよろしく」
満足そうに笑った加州の後を追い、草むらを抜けたあと別れる。
「あとは大将だけなんだよな」
「作戦を」
団子みたいに固まって作戦会議をする短刀たちの中に、きみの姿はない。
「誰です!?」
俺の気配を察して、一斉に振り向いた短刀たち。
「「「鶴丸さん?!」」」
息までピッタリだ。
「よぉ、俺みたいな奴がきて驚いたか?」
「かえっいたんですね!おかえりなさい、鶴丸さん!」
ぴょんぴょんっと跳ね、俺に飛びついた今剣を抱き上げる。
「悪い、今剣。まだその言葉に返せ無いんだ」
「…ふぅん。なるほど、わかりました」
「わかったのか?!」
「はい!鶴丸さんも、はいります?かくれんぼ」
「主探してるんだろ?俺も助太刀しよう、一度逃げられてしまってな」
「にがしちゃったんですか??」
「そこの信濃に呼ばれたせいでね」
「ごめんなさーい」
「なに、もう一度捕まえれば良いだけ。そうだろ?」
「こころづよいです!よぉしっ、じゃあ、みんなであるじさまをさがしますよ!!」
「ばびゅーんと?」
「はい!ばびゅーんっと!だれがさいしょにつかまえるか、きょうそうですっ」
俺の腕から抜け出る。