第11章 じゅういち
「みっーけた」
「加州」
「おかえり、鶴丸」
「…わるいが、まだそれをあの子に言ってもらって無い」
「時間はたっぷりあげたはずだけど?人払いまでしてさ」
「聞いてたのか」
「むしろ気づいてるとおもったけど?だから言わ無いんだと思った」
見慣れていたはずの内番着ですら懐かしい。
「言わせてくれる暇もなかったけどな」
「俺の弟はこう見えて臆病だからな、昔から」
「…ぐうの音もでない」
「ついでに言うと、主も素直じゃない。あと、鶴丸が待たせたせいで、変にひねくれた。困ったもんだよ、帰還予定日が5回前の誕生日だったからって、誕生日だけはずっとゲートの前で健気に待ってるんだもん」
「ひねくれたんじゃなかったか?」
「ひねくれと健気は対義語じゃないでしょ」
「似たようなものだろう?」
「ま、とにかくさ。弁明する気はある?」
弁明する気もなにも、向こうが聞きたくないだろう。
あからさまに距離を取られたのだから。
「手紙、届けてやろうか?」
「なにを」
「約束守らせてくれなかったから」
「送れる状況じゃなかったんだよ」
「過去の主に夢中で?」
「断じて違う、考えてたのは今ののことだ」
「…っ、知ってたの」
「あぁ、知っていた。と言うより、小さい頃に俺を慰めたあの子が口を滑らせたんだ。
まぁ、だから、どうにでもできたところを君が言うように俺は臆病だからどうにもできなかったんだ」
「片想いじゃないんだね」
「俺の片思いだ」
「馬鹿。本当にそう思ってるとしたら、馬鹿だよ。鶴丸の過去の主も、その主の気持ちを汲んで伝えようとした今の主も、きっとおんなじ事思ってる。鶴丸、綺麗事みたいにいうけど、他人を生かしたい理由なんて一つしかないよ」
呆れたような加州。
「その人がいない世界を生きたくないだけ。いない時間を過ごしたくないだけ。それだけ、大好きで愛おしいってこと。でも、それを押し付けた主は少しだけ自分勝手で愚かだ」
「…っ」
「まぁ、ただの人がいいやつっていうのも会ったことはないけど、いるんだろうから、一つって言っても絶対ではないけど」
「主が後者かもしれない」
「その解釈、この後に及んで、本当似たもの同士っていうか、2人とも拗らせてんな」
げしっと脛を蹴られる。地味に痛い。