第11章 じゅういち
「主は、裏庭の方探してきて」
「えー、よりによってゲートから1番遠いじゃん」
「だからいいんだよ、早く早く!
1時間以内に鬼が全員見つけたら、俺たちの勝ちだよ!大将」
信濃君にせつかれて、裏庭へと向かう。
かくれんぼなんて何年降りだろう。
戦いに慣れてる彼らを見つけるなんて、人では無理じゃない?
なんて思いながら、渋々裏庭に向かう。
漂ってきた花の香りに、私は顔をあげた。
…え?
裏庭の奥、背の高い木に淡いピンクが映える。
振り向くことすらせず、ただその木にひきよせられるように。
「桜…?」
いっぽんの木だけ、誇らしくさいている。
「どうして」
ー…ドサッ
近寄ると目の前の落ちてきた物体に、思わず後退りする。
「…ってて、こりゃ驚きだ」
聞き慣れた声。
待ってた声。
少しだけ見慣れない姿。
この世のものとは思えないほど、綺麗な姿に息を呑んだ。
「っ、」
「……おっと、見つかっちまったか。突然現れて、たいそう驚かせてやろうと思ったんだがなあ。はっはっはっ」
「…っ。」
「というより、俺が1番驚いているんだがな」
ぎゅっと、なりふり構わず抱きしめる。
「…主?」
「馬鹿」
「馬鹿とはひどいな」
「ずっと、ずっと待ってた」
泣いてるのがバレたくなくて、声を張って、顔を見せないようにして強がる。
そっと、私の背中に手が回る。
…怖かった。
優しくて、暖かくて。
「旅立ちのとき、変なこと言っちゃって…ずっと謝りたかった」
都合のいい夢みたい。
「俺の方こそ遅くなって、すまなかった」
「ずっと、会いたかった」
「俺も」
「嘘つき。私もう、25だよ?何回も、あれから何回も季節が変わったのに…っ、」
ぎこちなくさすってくれる腕に甘えてしまう。
「お手紙、ずっと待ってたのに…っ、」
「ごめん」
「初めも3通目も、変わらずに楽しみにしてたのに!」
「あぁ」
「…1通も届かなかった」
「忘れてたわけじゃないんだ」
「絶対嘘。誕生日プレゼントだって、全然届かないし」
「それも、すまない」
熱が離れる。
「本当は、謝罪が欲しいわけじゃない。…あなたが、無事に帰ってきてくれてよかった」
「もう、呼んでくれないのかい?」