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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第11章 じゅういち


 「主、いつまでそこでそうしてるの?」

 主の25回目の誕生日がもうすぐ来ようとしている。

 「誕生日の日はここにいるって決めてるの」
 「そうだね、5つ前の誕生日からずっとこの日はこうしてる」
 「清、今日はお仕事全部お願い」
 「もう、主ってば誕生日のたんびにずっとそれ」

 帰りを、ずっと待っている。

 「枷、そんなに長くしたつもりないんだけど」
 「前回も同じようなこと言ってたね」
 「100年も生きてたら、そろそろみんなにとっても私は大人な魅力的な女に感じるんじゃない?」
 「人間にとっての100年でも、主にとったら、25年でしょ。まだまだだよ」
 「人間は100年したら大抵の人が長い眠りについてるころよ。私も人なんだけどなぁ」
 「主は神域にいすぎて、誕生日の影響を強く受けすぎたからね」
 「…でも、いつかは私の灯火も消えるでしょ?」
 「考えたくないけど、そうね」
 「4通目どころか、1通も来ないって。伊達さんは筆豆だったんじゃないの、光ちゃん」
 「僕に当たらないでよ」

 苦笑いを浮かべた燭台切は、テコでも動かなそうな主のために、先ほど昼食を運んできてくれたのだ。

 「それに、気配が消えたわけじゃないんでしょう?気長に待ってようよ」
 「私は手紙も、懐剣ももらってないもん」
 「懐なら俺が入ってあげるよ!粟田口ならみんな入りたがると思うけど」
 「いち兄も?」
 「私はちょっと、無理かと」
 「いち兄と、信濃どうしたの?」
 「いえ、今皆でかくれんぼをしておりまして、私たちが鬼なのです」
 「大将もやろうよ。楽しいよ」

 信濃の言葉に俺も乗る。

 「いいねいいね。やろうよ、主」

 主が塞ぎ込むよりいいかと思って。

 「じゃあ僕も、これを下げたら参加しようかな」
 「やった!!燭台切さんも?!そうだ、じゃあみんなでやろうよ」

 信濃の笑顔に絆されないでいられることなんて、主にはきっと無理だろうから。

 「本丸かくれんぼ大会!範囲は敷地内ね!主も鬼ね」
 「え?私も??」
 「うん、俺といち兄も鬼!加州さんと燭台切さんは隠れていいよ!」
 「よし!じゃあ、俺のこと1番に見つけてね、主」
 「…はぁ、もう。わかったよ。一回だけね」

 重い腰を持ち上げた主、少しだけ進歩だ。
 せっかくの誕生日なのに、待ち続けるなんて気の毒だ。
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