第10章 じゅう
「頭を使うのは、性に合っているはずなのに」
《何、わからないことでもある?答え合わせしよっか》
「俺の未練がきみ縛りつけたと思った。だから忘れられないんだって」
《あぁ。そういうこと…そうだね。それもある。でもそれだけじゃない。キスの瞬間、願っちゃったの。やっぱり生きたいって、キスの意味聞かなかったって。最後の瞬間まで片想いって思ってた。だから、片想いを断ち切るためにも、私を刺してって言ったの。力を解放するためもあるけど》
きみが悲しく笑う。
《狂ってるでしょ》
「…」
《第一、国永の想いだけじゃ留まれないよ。過信しすぎ。分霊なのにあなただけがそんな力持つはずないじゃん。審神者の力もあってこそだよ。
国永のせいじゃない。何かのせいなら、私があなたに酷いこと頼んだせい。
まぁ、うーん。飾りを私に持たせたのは良く無かったかもしれないけど、それもあって変に歪んだ?って言っても、微微たるものだけどね。偶然が重なっただけのこと》
想い出のきみが、儚く残り過ぎたのかもしれない。
こんなに芯の強い女性だと、そもそも俺は気付いていただろうか。
《…あと、もう一つだけ。国永の今の大切な子、私と魂が似てたからだけじゃない。無意識に強い力を持つあの子だから干渉できた。忠告、しておくね》
「忠告?」
《これって結構あぶないよ。力が強いから、こちら側に連れてこられちゃうかもしれない。私みたいにならないように、繋ぎ止めてあげて。
…国永が修行から帰ってから、様子が視えるの。私と変わってくれようとしてるのかもしれない。できちゃうよ、あの子なら》
「っ、」
《酷い顔。…初めて見た顔してる》
「…」
《強く願えば、帰れるよ。強く想って、彼女のことを》
「願っていたと思ったんだが」
《私によそ見しておいて?…もっと強くだよ、具体的に。想像して、帰りたい場所のこと》
「…」
《ほら、早く》
強く、想う。
きみに急かされるように、目を閉じる。
《伝えるんだよ、ちゃんと。刀だけど、想いはあるよ。人の身を得たんだから》
きみの言葉がまっすぐ伝わる。
《目は開けちゃダメ、………あなたと、あなたの大切な人にどうか、ご加護を》
目を閉じていても、激しいほどの光に包まれる。
そこから記憶がない。
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