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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第10章 じゅう


 《国永…》

 なんて甘くて、優しい響き。

 潤んだ黒い瞳に吸い込まれるように、顔を寄せる。

 もういい、もういいんだ。
 俺の全てで償う。

 俺たちはあの頃、想いあっていた。

 刀と人、神と人。
 見た目が似ていても、芯の部分は違う。

 許される訳がない。

 それでも、惹かれてしまっていた。
 
 ((鶴さん!))

 もう少しで触れると言うところで、留まる。
 目の前の笑顔が歪む。

 あぁ、最低だ。
 俺は償わなきゃいけないのに。

 でも…。

 《国永》

 どうして俺は、安堵してるんだろうな。
 よく見ると、"きみ"と主は、あまり似ていないんだな。

 《どうして、やめるの?》

 きみが眉を八の字に寄せる。

 「…すまない」
 《また、1人にするの?》

 その言葉で冷静になった。
 …と言ったら、残酷だろうか。

 「俺は、最低だ」

 きみの手が離れる。

 「俺、きみを罵ろうと思ってた。
 夢をみる瞬間まで、何もかも思い出すまで。
 なんで助けたんだって、護られたくなかったって」 
 《…何言ってるか、わからない》

 俺の気持ちを一方的にぶつけている自覚はある。
 自分自身を、最低な奴だと自分でも思っている。

 「すまない」
 《嫌だ》
 「…俺だって、そう思ったさ。きみに守られた時」

 瞳が揺れる。
 泣きそうなのは、俺だけだと思った。

 「独りだと自覚した時…ちがうな、君に…君を?…突き刺した時」
 《国永、》
 「どうしてあんな命令したんだ」
 《…それは、》
 「最後の霊力をつかえるように。重傷のやつらが折れず刀の姿を保てるように」
 《何だ、聞いてくるくせに、分かってるじゃん。
 …審神者になるって決めた時、政府と契約を3つ交わした。
 私の最後がどうなっても、最後の霊力はみんなに使えるようにして欲しいってこと。政府は許してくれなかった。審神者の力は貴重だから。
 …だから、私が助かる見込みもない時だけって条件を付け加えた。
 それから、みんなの身の保証。どんな状況になっても刀壊はやめてほしいってこと。
 最後に、有事の際の本丸の解体はやめてほしいってこと。あの世界みたいに閉じていいからって》
 「……そんなこと」
 《そんなことじゃないよ、今の国永にはわかるでしょ》

 俺の目を捕える。

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