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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第10章 じゅう





















 …って、違うだろ。
 俺は、分かっている。












 主を貫いた刀種が、槍だからなんだ。
 慰めのつもりか?











 あの時、主を貫いたのは俺が取りこぼした敵だ。
 躱わしきれなかった、太刀だ。












 倒せない敵じゃなかった。











 疲労が溜まってなければ。
 傷がなければ。












 いつもの俺だったら。












 『…あるじ、』
 「…永。ひどい顔。………はぁ、っ、…はぁっ、……………みて、てき、帰ってく…」


 俺の腕の中で君が言う。


 『あぁ。…そうだな』
 「ねぇ、…」
 『話すなよ、もう』
 「…わかってるでしょ、………たし、…おわり、みたい。…いたくない、れいりょくの、おかげかな」
 『終わらない、終わらせない』
 「…ばか、…つかえるちからが、すくなくなってるの、…じぶんでわかる。
 れいりょくが、そこをつきそうって、わかる」
 『俺たちに供給するのをやめろ、』
 「……ははっ、…わるくないね、…………………くになが、お願い」
 『いやだ、聞かない』

 弱々しく俺に伸びる手。

 「じゃあ、………ごめんね、鶴丸国永…命令、します」

 疲労なんてどうでも良くなるくらい、酷く痛い命令だ。

 「…………さいごは、あなたがいい。あなたが…さして」

 …あぁ、思い出した。
 全部。

 キーンっと耳鳴りがして、その一瞬の記憶がない。

 主の頬こぼれ落ちた涙。

 トドメを刺したのは、槍でも太刀でもない。
 短刀でも、薙刀でも、大太刀でも、剣でも、打刀でも、剣でもない。

 気づいたら、俺が主に突き刺さっている。

 『……ははっ、………ははっ、』

 我に帰った瞬間、引き抜く。
 それが最善じゃないことは、自分がよくわかっている。

 そこから先は記憶の通りだ。

 残党を蹴散らした気もするが、こんのすけに呼びかけられるまで、俺は主だった君の体温が覚めていくのを待つだけだった。

 例えばあの時、主が命令しなければ助かったんじゃないか?
 俺は庇われただけじゃない。

 …罪を犯した。

 トドメを刺した。

 …わかっている。
 あの時あの場にいた物を助けるために、主は最善をつくしたこと。
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