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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第10章 じゅう


 君が叫ぶ。

 その声に振り向けば、あと数歩というところに敵が迫っていて、間一髪のところで躱わす。
 敵が倒れたのをみて、そっと息をする。

 『危なかった、ありがとな。主』
 『ううん。ありがとう、国永。…あと、下ろして』
 『だめだ、君は頑固だし。瓦礫で走りづらい。俺が担ぐ方が早い』
 『頑固って、国永に言われたくない。これでも、審神者として訓練は受けてるし、私に傷はない。それに、もう甘えたこと言わない。
 私が生きていれば、この本丸のみんなを助けられる。そうでしょう?』
 『分かったなら、構わないさ』

 そっと、下ろす。

 『あと、ちょっと国永の装備痛い』
 『それは悪かった』
 『なんてね。じゃあ、急ごう。避難した先でみんなを呼び戻す。
 そしたら、みんなの手当をして、本丸の立て直しを図る。それでいいよね』
 『あぁ、それでいいと思うぜ』
 『初期刀がいないのは少し心細いけど、国永もいるし』
 『あぁ』

 なんて言ってた矢先。

 『主!!』

 こんなおかわり頼んでないと思いながら、主を引き寄せて敵を払う。

 『ったく、気が抜けない』
 『さっきの国永かっこよかったよ、守って貰ったって国広に言わなきゃ』
 『いまいち締まらないな、君といると』

 腕を緩め、少し離れた時物凄い力で主に押される。
 こんなのいつもなら、へでもないのに。

 ダサいことに尻餅をついたのは、疲労が溜まっているせいだとカッコすらつかない言い訳を思いながら、主に恨み言でも言ってやろうとした時。

 『こんな時に何するんだよ………きみ、』

 視界の端で捉えた一本の槍。

 スローモーションに見える。

 主の心臓を一刺。

 『………は?』

 倒れていく主の身体、叫ぶのは俺か?
 頭でガンガンと何かが響く。

 狂ったように刀を振るう。

 冷静になれと分かっているのに、無理だった。
 訳が分からなかった。

 はぁっ…はぁっと、自分の息遣いが煩い。

 それが夢だと気づいたのは、俺の頬に伝う雨に温度を感じなかったからだ。

 嫌な夢だ。

 なぁ、山姥切。

 夢だろ、コレ。

 『あるじ、』

 傷以外は綺麗で、陶器でできた人形かと見間違うほど綺麗で。
 昂っているからこそ、主の繊細さを感じる。

 『あるじ、…まだ間に合うだろ、俺は、…諦めない』
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