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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第10章 じゅう


 『悪いな、主役に手伝ってもらって』
 「いや、俺のためにありがとう。驚きに満ちた宴だったぜ」
 『楽しめたなら、なにより。主の発案だからな』
 「へぇ、俺は愛されてるんだな」

 そう言うと、目を見開いて何を今更と呆れたような表情の山姥切。

 『…何を今更』

 鼻で笑うのまでセットだった。

 『主の気持ちを疑っているのか』

 酔い潰れた仲間や、弟達の寝かしつけに部屋に戻った仲間達。
 飲み直すと豪語してどこかに行った奴もいたな。

 気付けば残ったのは俺1人、それから主の寝かしつけで一度戻り不寝番の護衛とバトンタッチで戻って来た初期刀の方の山姥切。

 「山姥切には主がどんなふうに見えているんだ?」
 『…どうもこうもないな。そもそも色恋沙汰に興味はない。それより手を動かせ』
 「主役は俺じゃなかったか?」
 『それとこれは別だろう』

 大広間の宴会の片付けを、そもそも2振りだけでやるなんて無謀すぎなんだよと思いながら、手を動かす山姥切の前では言えない。

 『鶴丸、疲れたなら戻ってもいいんだぞ』
 「君が1人で片付けると?」
 『あぁ。俺はそれでも構わない。酔い覚ましにもちょうどいい』
 「もの好きだな。でも、朝もここで食べるだろう。今日の有様が片付いていたら、いい驚きを届けられると思わないか?
 そんないい手にのらない訳ないじゃないか」
 『アンタこそもの好きだ』
 「なぁ、山姥切」
 『なんだ』
 「もう一度聞く。俺と主の関係はどう見える?」
 『しつこいな、アンタ。修行の成果か?』
 「そんなところだ」
 『…はぁ。わざと気付かないふりしてるんじゃないのかと、アンタを見てると憎たらしく思う時がある』
 「どんな時だ?」
 『主に近づいて揶揄いを楽しむくせに、主がアンタの心に触れようとすると一定の距離をあける。
 気付かない訳じゃないだろう、俺の主は分かりやすすぎるくらいだ』
 「わかりやすい?」
 『惚けるな。政府が鬼を狩れ豆をまけとお触れを出している時に、ばれんたいんだの、本命だの、寝る間も惜しんで、主はちょこれいとを作る。
 他の男士にも義理と言って配るがな、アンタにだけは特別なものを贈ろうとする、そのちょこれいとづくりに毎夜付き合わされる俺の身にもなれ。
 甘いものが嫌いになりそうなほどだ』
 「へぇ、主は健気なんだな」
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