第9章 きゅう
「じゃあ、行ってくる」
食事の後、皆に見送られ俺がゲートを潜ろうとした時、
「待って!」
ぎゅっと、主の体温が背中に伝わる。
「引き止めてごめん!やっぱりさっき伝えればよかったって、後悔しそうで」
「あぁ」
「このままで、聞いて」
「わかった」
「さっき、プレゼントは極めた鶴さんでいいよって言ったの!あの頃、見られなかったから」
ドキッと心臓が掴まれたような感覚。
「きみ、」
「あの時、1人にしてごめん!私の勝手な行動が、ずっと…ずっと国永を捉えちゃってた」
「…っ、」
「今日、思い出すんだもんな…。国永が、修行に行く日に。言おうか迷った、でも!でも、言わなきゃいけないからこんなギリギリで思い出したんだって、都合よく解釈した」
「…そう、か」
「国永、忘れないで。修行に行っても、今の私のこと」
「え?」
「今から見に行くものがどんなものでも、今の私が…今の私が国永に持ってる感情は、私だけのものだから。
再会したときから今までずっと、“鶴さん"がずっと優しくしてくれたから、そばにいてくれたから、その時に産まれた感情だから」
「また…きみは、俺を捉えるのか」
こんな意地悪な言葉、君はどんな顔で受け止めるんだろう。
俺の腰に回された腕をそっと解く。
「そんなつもりじゃ…」
振り向けば、俯いた顔。
「そんなつもりじゃなくても、俺にとってはそうだった」
「…ん」
笑顔で別れなくていいのか、とか。
最後かもしれないのに、とか。
「俺はきみに、2度と護られたくない」
「うん」
「護られるのは、刀の本望じゃない」
「…そうだね」
そう言って顔をあげたきみが、ぎこちなく笑う。
「ごめんね、出がけに」
「大したことじゃない」
「…行ってらっしゃい」
「あぁ、」
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ー
一連のやり取りを見てた。
ただ、どんな会話をしているのか、俺たちはしらない。
鶴丸を見送って、それぞれが其々に散る。
「主」
「…ん。行こっか、清光」
強がった笑顔、誰よりそばにいた俺が気が付かないわけがない。
「鶴丸、行っちゃったね」
「そうだね」
「主、寂しいんじゃない?こーんなちっちゃい頃から、主は鶴丸にベッタリだったから。俺の方が主と長いのにさ」