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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第9章 きゅう


 「まぁ、まぁ朝ごはん出来てますから、食べましょうか」
 「左文字兄ちゃんズ、しれっとしてるけど和睦じゃないからね?!」

 主が少し顔を赤くして、誤魔化すように仲間たちを中へ押し戻してく。

 「…ふっ、」
 「幸せそうだね、鶴さん」
 「少し安心した」
 「ふん」
 「お前たちの気配、全く気付かなかったぜ」
 「2人の世界だったもんな」
 「抱き締めちゃえばよかったのに」
 「光坊じゃあるまいし、主はまだ子供だぜ?」
 「何言ってるの、あと4日もすれば主だって20歳だ」
 「俺たちからすれば、まだ子供だろ」

 主。

 まぁ、確かに。出会った頃よりは大きくなったな。
 見違えて綺麗になった。

 …あの子と、見間違うくらいに。

 「…っ、」
 「鶴さん?!」

 貞坊が箸を置いて俺の背中をさする。

 「…すまん、喉につまった」
 「落ち着いて食べなよ、ご飯は逃げないんだから」

 光坊が苦笑いする。

 「全くだ」

 こんなに鮮明に思い出したのは久しぶりだ。
 苦痛に歪まない、あの頃のあの子の笑顔。

 「心配かけてすまない。光坊のご飯を4日も食えないと思うとついな」
 「分かるぜ!俺も修行の時思った!なぁ、伽羅」
 「さぁな」

 誤魔化して、汁で流しこむ。

 「嬉しいこと言ってくれてるけど、今日は鶴さん大切な日なんだから」
 「分かってるよ、お前らにしばらく会えないとなると寂しいぜ」

 隣に座る伽羅坊にウザ絡みする。
 いつもは振り払うくせに、今日はされるがまま。

 「…帰ってきたら覚えておけよ」

 というセリフが恐ろしく、すぐに辞めたが。

 「ご馳走様、光坊。お前たちも」
 「なんだ、バレてたのか」
 「ふん」
 「火車切にも言っててくれ。あっちで楽しそうにしているしな」
 「伝えておく!しかし、よく分かったな!鶴さん」
 「この味噌汁の味は、伽羅坊が作ったもの。こっちの和物は貞坊、握り飯は火車切だろう?残りは光坊が中心で作ってくれたんだろう?」
 「すごい、正解だ」
 「分かりやすすぎるくらい、気持ちが込められてる。
 …帰ってくる。ちゃんと。野生の鶴だって、ちゃんと同じ場所に戻ってくるだろ?」
 「分かればいいんだ」

 いつもは馴れ合わない伽羅坊が、俺の瞳を見ながら言った。
 俺はここに帰ってこなくちゃいけないと、余計強く思った。
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