第9章 きゅう
「え?」
「清光とみんなと。鶴さんの大好きなものいっぱい作って待っておくから、だからちゃんと帰ってきて」
「…あぁ」
どうして、目を潤ませているのか。
「4年に1回だから、鶴さん忘れてるかもしれないけど。鶴さんが修行から帰ってくる日は、私の誕生日なんだからね!」
「…そうだったか?」
「プレゼントはっ」
意を決したように、俺を見る。
そんな真剣な顔で、どんなものを望むんだとこちらも息をのむ。
「…でいいよ」
「ん?」
「だから!…っだから、あー!もー!馬鹿!」
バシッと俺の腹に一発入れると、鼻息荒く背中を向ける。
「きみ、ちょっと今なんて言ったんだ??」
「そう何度もいわない」
少し早まる足。
本当になんて言ったんだか。
逃げ足だけは早いきみに追いついたのは、大広間の前。
走れさえすればよかったのに、こんな時だけおたがい歌仙のいいつけを守るんだもんな。
アイツ怖いんだよな、…って、和泉守じゃあるまいし。
「なぁ、きみ」
パシッと腕を掴む。
ぎゅっ、グルンっと。
「っつ!?」
俺が主の腕を掴んだ筈なのに、いつのまにか形勢逆転で俺の腕はありえない方向に曲げられている。
地味に痛い。
「あ、ごめん!つい!!」
「驚いたぜ」
ぱっと手を離した主が、眉を下げる。
「…うん、…ほら、私も強くなってる」
「それここで言うことか?」
「鶴さんに言ったんじゃなくて、実感したの。…鶴さん、大丈夫でしょ。私、強くなってきてる。さっきのは堀川くんに教えてもらった」
「そうだな、万が一の時は逃げてくれとは思うがな」
「その時はみんなが私を守ってくれるから」
「信頼してるんだな」
「何を今更、私、他の同じ歳の頃の審神者よりみんなと長くいるんだよ?」
「あぁ」
「鶴さんも、その一振り」
「光栄だな」
「うん」
ぐうっと腹の虫が鳴る。
「ふっ、朝ごはんたべよっか」
「そうだな」
障子に手をかけた瞬間、俺は主を下がらせる。
勢いよくあけると、雪崩れ込んできた仲間たち。
「は?」
「ちょっ!重いって!」
「仕方ないだろ!聞きたいのはみんな一緒なんだからよ!」
「盗み聞きとか信じられない、雅じゃないよ歌仙まで」
「ごめんね、主。つい気になってしまってね」