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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第9章 きゅう


 「だから起こしにきたよ」
 「それはありがたいが、きみ、いくつになっるんだったか」
 「19だね」
 「もう少し優しくできないのかい?」
 「お寝坊さんには優しくできないな」
 「…く」

 少し呆れ顔の主に見守られながらも俺は起き上がり布団を畳む。

 「あ、しまわなくていいよ。今日はお天気がいいし、みんなのお布団干すことになってるから」
 「そうか」
 「安心して、ちゃんと帰ってきたらふかふかのお布団に寝られるように、修行終わりの日にも干すから」
 「それは楽しみだぜ」

 布団を畳んでもまだ、退散しない主を盗み見る。
 こてんと首を傾けた主、きみがいたら俺は着替えられないんだが。
 一つ咳払いをする。

 「あ、ごめん。着替えか!」
 「着替えたら行く」
 「うん」

 部屋を出た主が障子を閉めた後、俺は帯に手をかける。

 しゅるっと解け、はだけた着物。
 加州に言われた"頼りない肩“という言葉に違いないな、と、昨日を思い出す。

 汚名返上しなくてはな。

 少し気合をいれて、戦闘服の帯締めを締めた。

 「よしっ…うあわっ」

 障子を開けたとき、いると思わず思い切り驚く。
 珍しい声を上げてしまったと、耳に熱が集まるのを感じる。

 「驚いた?」

 全く誰に似たんだか。

 「あぁ。情けなくも、驚いたぜ。先に行ったとばかり」

 悪戯が成功した子供みたいに無邪気に笑ったきみから、笑顔が消える。

 「うん、…いや。ちゃんと話してなかったなって、修行の話聞いた時はついに来たんだって思いながら、ちゃんと実感できなくて。
 …というか、こんな日が来るのはわかってたけど、甘えもあってちゃんと向き合えなかったから。審神者じゃなくて、私として向き合いたくて」
 「そうだったのか、あまりに淡々としていたから」
 「動揺してるって思われるのかっこ悪いかなって思って。修行前にちゃんと話したい」

 真剣な眼差しに俺も答えなくてはと、気持ちを作る。

 「鶴丸国永」
 「あぁ」
 「うん、まずは…うーん、そうだなぁ」
 「…ふっ」
 「なぁに?」
 「だってきみ、話したいって言ったからてっきりまとまったものがあるのだと」
 「はっきり言って、まとまってない。…でも、今何か言わないと、御伽話の鶴みたいにどこか行ってしまいそうだから。
 私ちゃんとここで待ってるから」
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