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《刀剣乱舞》この雨が止むまでは

第9章 きゅう


 「鶴丸、忘れ物はない?」
 「あぁ、大丈夫だ」

 前回加州が使った行李に荷物を詰める。

 「加州、本当に明日じゃなきゃダメなのか?」
 「明日行けば、主の誕生日には間に合うでしょ」

 結局システムのエラーが直ったのは、なんの因果か主の誕生日の数日前。
 俺と主の関係は変わらずで、というより主はたまに痛々しい笑顔を見せて、急に大人にさせたのは俺なのに少し寂しく思うなんてどうかしている。

 「だが…」

 修行に行くと決めてから、長居したせいで今更修行に行くのも躊躇われる。

 「だがじゃない。約束したでしょ、強くなるって。主も鶴丸に期待してるからこそ、送り出すって決めたんだよ」
 「…」

 ガシッと肩を掴まれる。

 「前から思ってたけど、アンタの肩って頼りない」
 「それは驚きだぜ、少し傷つく」
 「だから、頼れるくらい強くなってきてよ」
 「あぁ」
 「鶴丸、しょうがないから約束聞いてあげる」
 「約束」
 「言いかけただろ、俺が修行行くとき」
 「よく覚えてるな」
 「当たり前」
 「…俺が出した手紙を受け取って、主に渡して欲しい」
 「うん。…うん?」
 「3通、全て」
 「わかった」

 そんなことか、という顔をしている。
 口にしないのは、俺の過去を知っているから。

 「俺は修行に行ったことがある。その先で見てきたものも、俺は覚えてる」
 「うん」
 「…だが、3通目だけ届けられなかった。2人目の時だ」
 「うん、そっか」
 「1人目の時は、修行は解禁になってなくてな。2人目以降も、修行中や修行前に俺は1人になってしまう。いつも」
 「でも、今回は違う。俺がいる、でしょ?」
 「…あぁ」
 「大丈夫、俺は約束破らない」
 「うん。…まぁ、だから。本当はずっと怖い。…だけど、今回そこを越えられたら、俺は変われる予感がしてる」
 「うん」
 「加州、今日は一緒に寝ないか?」
 「え?やだよ、絶対」
 「え」
 「伊達の連中がいるだろ」
 「それはそうだが…」
 「こういう時は、普通にしてたほうがいいんだよ。落ち着かない気持ちも分かるけどね」
 「一期は弟達と寝てるじゃないか」
 「俺はこんなにでかい“弟"と寝る趣味はない」
 「きよ兄」
 「鯰尾の真似したって無駄。どうせなら、五虎退とか秋田の真似しなよ」
 「それはあまり似ない」
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