第10章 千尋
「あぁ、ただいま」
「今日の夕飯はポトフだよ」
ポトフは僕の好物だった。
グラタンに勝るとも劣らない程に僕は好きだったのだ。
「ポトフの季節になったんだな。僕は好きだよ」
「そう思って作ったの。お兄ちゃん、手洗ってきて」
「わかった」
僕はそういうとバスルームの奥にある洗面所に行った。
そこで、念入りに手を洗った。
そして、キッチンのダイニングテーブルへと腰かけた。
目の前にはポトフが入ったお皿とコーンスープにサラダが並べられていた。
僕は基本、余り白米は食べない。
この日も白米の代わりにバケットが置かれていた。
千尋が買ってきてくれるバケットはとても美味しかったのだ。
「頂きます…」
そう僕と千尋は言うとポトフを食べ始めた。
僕はバケットに手を伸ばし、ポトフのコンソメの味がするスープにそれを浸した。
丁度よくコンソメには野菜の出汁とソーセージの味が出ていて美味しかった。
僕は食べながらどう話を切り出そうかと思っていた。
食後の後にした方が良いだろうか。
それとも、食事の最中が良いだろうか。
ちょっと悩んだ挙句、食後の珈琲の時が良さそうだと僕は思った。
僕は無言で食事をした。