第8章 彼女
この時は千尋のことを一瞬忘れることができた。
「はい、どうぞ」
「ありがとう…」
僕はまゆみのそんな心使いが嬉しかったのだ。
サラダが来るとメインのハンバーグが運ばれてきた。
出来立ての熱々だった。
ハンバーグはアルミホイルで包まれている。
「細野さん、これどうやって食べるのかしら?」
「アルミホイルを開けてごらん、熱いから気を付けて」
まゆみは恐る恐るアルミホイルを開けていった。
僕もアルミホイルを開けてみる。
開けると同時に大量の湯気が立ち上る。
そして、肉汁溢れるハンバーグが現れた。
「わぁ~、すごーい」
まゆみからそんな言葉が出てきた。
とても喜んでくれている様子だった。
僕はそれを見ると心から嬉しいと感じた。
「さ、熱いうちに食べよう」
「はい」
まゆみはナイフを入れた時の肉汁に驚きつつも、その美味しさに驚いていた。
僕は、いつもの味でいつもの美味しさだと思っていた。
「細野さん、本当に美味しいわ」
「そう、喜んでくれて良かった」