第8章 彼女
土曜日は気持ちのいい秋晴れだった。
僕たちは二子玉川で待ち合わせることにしていた。
二子玉川にある“つばめグリル”にまゆみと一緒に行こうと思っていたのだ。
このことは千尋には内緒だった。
つばめグリルとは落ち着きのあるレトロモダンな内装の店内で、ビーフシチューをかけたハンバーグステーキなどの洋食を中心としたメニューが並んでいる店だ。
この店のビーフシチューをかけたハンバーグステーキは絶品だった。
僕は、田舎から出て来て初めて東京にあるこのつばめグリルでハンバーグステーキを食べた時感動を覚えたのだ。
そんな感動を覚えたハンバーグステーキをまゆみと一緒に食べたかった。
待ち合わせの時間は午前11時だった。
僕は改札出口の横でまゆみを待っていた。
数人の人がやはり誰かを待っている様だった。
僕は道行く人をぼんやりと見ていた。
恋人と待ち合わせている様な女性。
母親を待っているのだろうか。
中学生くらいの子供も居た。
そんなぼんやりとしていた11時ちょっと過ぎた頃だった。
ローラアシュレイの淡い青の花柄のワンピースを着た女性が改札から出てきた。
僕はゆっくりと駆け寄って声をかけた。
「本城さんですか?」
「はい、細野さんですか?」